高金利が長く続けば、将来利益が遠いスペースXの価値は目減りする
インフレが再び加速し始め、連邦準備制度理事会(FRB)の新議長ケビン・ウォーシュが就任する中、高金利が長く続くとの見方が再び強まっている。
ウォーシュは就任後初の会合で金利を3.50%〜3.75%に据え置いたものの、委員会の論調は大きく様変わりした。同僚のうち9人が年内の利上げを支持し、うち6人は0.25%幅の利上げを2回行うべきだとした。3月時点では、政策当局者の誰一人として利上げを見込んでいなかった。
この転換を促したインフレは、現実に進行している。5月の消費者物価指数(CPI)は4.2%に達し、過去3年で最高の数値となった。主因はイランでの紛争に絡んだ原油価格の急騰だ。スペースXは、利益を回収するまでに長い時間がかかる典型的な長期資産(ロングデュレーション・アセット)である。スターシップやスペースXのAI事業が生む利益の大半は、10年以上先にならなければ手に入らない。リスクフリーレートが0.25%(25ベーシスポイント)上がるたびに、そうした遠い将来の価値(ターミナルバリュー)を今の価値に換算した額は目減りしていく。
DCFで試算した適正評価額は161兆円で、現在の株価は楽観的すぎる
評価額の開きは、依然としてうまく説明がつかない。私たちのディスカウント・キャッシュフロー(DCF)モデルでは、適正価値は1株あたり約79ドル、評価額にして約1兆ドル(約161兆円)と算出される。現在の株価に織り込まれた重要な前提の多くは、楽観的すぎるように見える。
編注:ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)とは、企業が事業で将来生み出す現金収支(キャッシュフロー)を基に企業価値を測る手法。10年後に受け取る現金は今すぐ受け取る現金より価値が低いと考え、将来の現金を一定の率で目減りさせて今の価値に直す。この目減りさせる操作を「割り引く」といい、金利が高いほど目減りは大きくなる。
Starlink(スターリンク)のARPU(ユーザー1人あたりの平均売上高)は、加入者の伸びが低所得の海外市場へと移り始めたことで下がりつつある。打ち上げ事業は、Falcon 9で稼いだ利益をスターシップの開発に回す形に依然として頼っているが、当のスターシップはまだ大規模で安定した商業運用を見せられていない。さらに、引受会社はスペースXのAI事業を将来の重要な成長の柱と位置づけているものの、この事業はなお極めて投機的で、売り先が限られたまま四半期あたり80億ドル(約1.29兆円)近くの資金を消費し続けている。現在の評価水準では、投資家は、今後数年にわたり事業が完璧に進むことを、実現する前から株価に織り込んで対価を支払っていることになる。


