それでも、どうしてもアルコール前提のお店に忍び込みたい下戸の貴方へ
それでも、どうしてもアルコールが前提の、そのお店でなければならない事情があることもあるでしょう。そんな時は、「常連客を介して」お店に真剣に相談することをお勧めします(一見のくせに例外の交渉を求めるのは、ちょっと図々しいです)。そこまでの熱量でラブコールを送られれば、お店側も悪い気はしません。妊娠中、療養中、宗教上の食事制限といった事情を誠実に伝えれば、多くの場合は真摯に向き合ってくれるはずです。
ただし、お店側にもそれぞれの事情があることを忘れないでください。店の雰囲気や利益率の問題、あるいはこれまで断ってきた他のゲストへの示しがつかないといった理由から、どうしても首を縦に振れないケースもあります。あくまでもお店の判断を最優先とし、受け入れてもらえた場合はその厚意に応える振る舞いを心がけましょう。丁寧に相談を重ねれば、互いの落としどころは見えてくるはずです。
なお、これはアルコールの問題に限らず、年齢制限や人数制限、持ち込みの可否なども同様です。「早い時間帯であれば」「個室であれば」「貸切であれば」といった条件付きで融通を利かせてくれる場合も少なくありません。公式ウェブサイトに「子連れNG」と明記しておきながら、実際には個別相談に応じているレストランもあるほどです。意図せず誤ったゲストを招き込まないための、店なりの知恵と言えるでしょう。
ごく稀に、そういった相談を一切すっ飛ばし、酒豪と同伴することで「ひとり当たりの飲酒量」を帳尻合わせするという荒業を繰り出す猛者もいらっしゃいます。そこまでして潜入捜査して何が楽しいのか、という気もしますが、笑い話のひとつとして受け取っていただければ幸いです。
まとめ
長々と書き連ねましたが、結論はシンプルです。飲食店は私的な空間である以上、お店が定めたルールに従う。ただそれだけのことです。
どうしてもそのルールの外に出たい事情があるなら、真摯に相談してください。お店独自のルールやマナーには、それが定められた理由が必ずあります。貴方に酒を飲めない事情があるように、お店にも酒を注文してもらいたい事情がある。他人の敷地にお邪魔する立場である以上、飲めない側に分があるとは言いにくい。それだけは心得ておきましょう。
「最近のトレンドでは」「海外では酒を頼まなくても」「ハンドルキーパーなので」「宗教上の理由で」「妊娠中なんだから」「金を払っているのだから」。こうした言葉がSNSに溢れるたびに、飲食店側の反応は決まって同じです。ルールはより明文化され、より厳格になり、より多くの店が「飲まない方お断り」の看板を掲げるようになる。議論が盛り上がれば盛り上がるほど、皮肉にも選択肢は狭まっていく。声を上げれば上げるほど、飲めない客の居場所が減っていく。主張が状況を改善するどころか悪化させているとしたら、これまでのノンアル勢の戦い方に見直す余地があったのかもしれません。
思えば、飲食店とはそもそも、人が集い、食を囲み、ひとときを共に過ごすための場所です。酒を愛する者も、事情があって杯を傾けられない者も、同じ食卓を求めてその扉を叩いている。対立しているように見えて、根っこにあるものは同じはずです。怒りをぶつけ合うより、互いの事情に少しだけ想像力を働かせる。お店はルールを押しつけるのではなく丁寧に伝え、客はそのルールの背景を理解しようとする。そんな小さな歩み寄りが積み重なれば、この問いはいつかもっと穏やかな場所に着地できるのではないか。私はそう信じています。


