「ノンアルコールペアリング」を供する高級店も
ある高級日本料理店では、酒を飲もうが飲むまいが請求額にさほど差が生じない価格設定を採用していますし、「生ビール10円」という挑戦的な試みを打ち出す焼肉店もあります。酒もソフトドリンクも全て飲み放題込みで一律1万5千円という割り切ったスタイルの店も増えてきました。悩ましい議論をすっ飛ばすこうした発想は、ひとつの賢い解答かもしれません。
そのため、事情があってアルコールを注文できない方は、事前にネットで情報を集めてから飲食店を訪れることをお勧めします。ドレスコードの有無を確認するのと同様に、アルコールの注文が求められる店かどうかを、明示されていなくとも雰囲気から察せられる場合も含めて、あらかじめ確認しておくことが肝要です。
ここで「飲まない権利」「選択の自由」を声高に主張したところで、結果として「飲まない方お断り」の店が増えるだけです。それは結局、長い目で見れば自分たちの首を絞めることにしかなりません。酒飲みのために設計された店に無理に潜り込んだとしても、調理も調味もアルコールと共に味わうことを前提に組み立てられている以上、その店の本質を堪能することはできない。シガーバーに嫌煙家が闖入するようなもので、誰も得をしません。
そのようなミスマッチに固執するよりも、ノンアルコール歓迎の店を探し、そちらに予算と気持ちを向けた方がお互いにとって幸せです。くどいようですが、飲食店など他にいくらでもあるのです。
悪いニュースばかりではありません。最近の高級店では、ノンアルコールドリンクのペアリングが充実しつつあります。「ノンアルなのにアルコールのペアリングと同じ価格設定!?」と感じる方もいるかもしれませんが、それらはお店が試行錯誤を重ねた末に生み出した料理の延長線上にある液体です。その一杯のためだけに素材を選び、仕込みをし、提供する。手間と人件費を考えれば、決して割高とは言えません。料理に寄り添う形で一杯ずつ供されるため、席上の絵としても様になります。
高級店におけるノンアルコールペアリングは、飲めない客にとっても、店にとっても、そして同席者にとっても、納得感のある有力な選択肢と言えるでしょう。


