手を伸ばして、耳の下部を触ってみよう。その柔らかく、肉厚で、何の変哲もない耳たぶは、生物学的な観点から見れば、奇妙な進化の遺物だ。
解剖学的には、耳垂(じすい)と呼ばれる。その構成は、外耳のほかの部分とは一線を画す。耳介の上部が弾性軟骨によって形成・支持されているのに対し、耳たぶには弾性軟骨が一切ない。主に疎性結合組織と脂肪組織で構成されている。これらは緩やかで脂肪が多い柔軟な組織であり、血液供給が驚くほど豊富で、末梢神経のネットワークが張り巡らされている。
その血管の分布は確かに、あることを示唆している。軟骨がないため、耳たぶには血液が自由に流れ、これが微細な体温調節に寄与している可能性がある、と一部の研究者は指摘している。寒い環境では、まるで放熱装置のように機能して耳を温めるというのだ(その効果はごくわずかで、おそらく無視できるほどだが)。
また、感覚神経が分布していることから、一部の人々のあいだでは、耳たぶは性感帯と見なされている。動物学者デズモンド・モリスは1967年の著書『裸のサル』(邦訳書:KADOKAWAなど)の中で、耳たぶはまさに、人間のペア・ボンディング(つがいの形成)を促進するための追加的な感覚領域として進化したと述べたことは有名だ。これは興味深い考えだ。しかし、現代の科学的知見に照らせば、知識に基づく推測の域を出ない。
あまり聞きたくないかもしれないが、真実はこうだ。何十年にもわたる解剖学研究の結果、耳たぶには大きな生物学的機能はないと考えられている。聴覚を意味あるかたちで助けるわけでもない。体温を著しく調節するわけでもない。現時点で判明している限り、耳たぶは、ただそこにあるだけの組織にすぎない。
なぜ進化は耳たぶを残したのか?
耳たぶは、霊長類の身体構造に比較的新しく追加された特徴のようで、人間、チンパンジー、ゴリラにのみ見られる。この分類学的分布から、耳たぶはおそらく600万~1000万年前、類人猿の系統のどこかで出現したと考えられる。
しかし、明確な機能が特定されていないにもかかわらず、3種にわたって耳たぶが存続していることは、ある明白な疑問を投げかける。自然選択はなぜ耳たぶを排除しなかったのだろうか? 排除されてしかるべきだったのではないだろうか?
答えは、必ずしもそうとは限らない、だ。進化に関する主な誤解の一つは、進化には必ず目的があり、効率を追求するプロセスであり、あらゆる生物のあらゆる形質が有用であるか、さもなければ消滅する運命にある、という考え方だ。実際には、進化は生物学的な過剰を大いに許容している──特に、その形質が有害ではなく中立的な場合は。



