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サイエンス

2026.06.25 18:00

ヒトに「へそ」がある理由、太古より続く最初の傷跡の物語

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「へそは何のためにあるのか」と尋ねられたら、「さあね」と肩をすくめる人がほとんどだろう。お腹の中央にある小さなへこみに、取り立てて意義などなく、身体的な設計ミスのようにさえ感じられるかもしれない。日常会話においてへそは、いってみれば生物学的な重要性がほとんどないもので、気まぐれと冗談の中間にある何かとして扱われている。そうした意味論的な思考停止は、へそに関する実に興味深い事実を、ほぼすべて見落している。

へそに、機能があるわけではない。より正確にいえば、へそは体の記録だ。具体的には、体に刻まれた最初の傷跡であり、あなたが存在するに至った過程を示す、永続的な解剖学的注釈といえるかもしれない。

私たちがなぜへそを持つのかという問いは、単なる解剖学的な疑問ではなく、進化的な疑問でもある。その答えは、さかのぼることおよそ2億年前に起こった、生殖を巡る賭けに行き着く。その時の賭けがのちに、この地球に存在するすべてのイヌやクジラ、コウモリ、そしてヒトを作り出すことになった。

へそは、傷跡であって臓器ではない

まずは、へそとはいったい何なのか? というところから始めよう。へそは、臨床用語で「臍(さい)」と呼ばれる。胎児が母親のお腹にいるあいだ、血管構造である臍帯(さいたい:へその緒)が胎児と胎盤を結びつけるが、この臍帯が子どもとつながっていた部分の名残がへそだ。

子どもが出生した後、へその緒が切られて残った部分(臍帯断端)は、やがて乾いて剥がれ落ちる。その後、その根元にある「臍輪(さいりん)」の組織がふさがり、傷跡として残るのがへそだ。より具体的にいえば、へそとは、母子を結びつけていた次の4つの構造(へそにつながる動脈は2本あるため)が退縮した名残といえる。

(1) 左臍静脈(出生後は、臍静脈索[肝円索]というひも状の組織に変化する) 
(2) 閉鎖退縮した尿膜管(もともとは膀胱とつながっていた管)
(3)(4) 2本の臍動脈(出生後は、臍動脈索というひも状の組織に変化する)

2019年に『Acta Bio Medica』に掲載されたレビュー論文によると、機能的に見るとへそとは、生涯にわたって人体に残る、最も恒常的な傷だという。

へそが「凹んでいる」か「突き出ている」か──この問題は些細ではあるが、ここで取り上げておこう。これは、助産師や産科医によるへその緒の切り方とはいっさい関係がなく、へその組織の癒え方に左右される。つまり、皮膚が内側へと収縮するか、あるいは、少量の余分な瘢痕組織(傷痕)や軽度の臍ヘルニアによって皮膚がはみ出すかということだ。出産時の技能のせいではなく、個々の生物学的な違いなのだ。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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