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食&酒

2026.07.10 16:15

女人禁制の秘密結社だった? スペイン・バスクに美食倶楽部100以上ある理由

テイスティングで供されたピンチョスも一つ一つが美味

サウナ商談を打破せよ──ビジネスの最前線に立つバスクの女たち

母系社会のDNAは、現代のワイン業界における女性たちの台頭にも見て取れる。前述のゲタリアにあるタライベリでは、醸造を担うイチャル・エイサギレ(Itziar Eizaguirre)氏がD.O.ゲタリア・チャコリーナ初の女性会長に就任して業界を牽引し、姉であるオンディッツ氏が輸出やマネジメントを取り仕切る強固なタッグを組んでいる。

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姉妹でチャコリの伝統を受け継いでいる。
姉妹でチャコリの伝統を受け継いでいる。

さらにお隣のワイン銘醸地リオハ・アラベサにあるルイス・デ・ビニャスプレ(Ruiz de Viñaspre)では、母娘がオーナーとして実権を握っている。

ワイン業界が男社会だった時代。ロシアでは、ワインの商談が男性専用の高級サウナで行われ、女性はビジネスの意思決定の場から事実上排除されていた。しかし同ワイナリーの3代目にあたる母は、密室の商習慣に屈することなく、スーツケースに60本ものワインを詰め込み、単身でロシアやブラジル市場を切り拓いてみせたのだ。

ルイス・デ・ビニャスプレのオーナー母娘 カンタブリア山脈を背景に
ルイス・デ・ビニャスプレのオーナー母娘 カンタブリア山脈を背景に

現在、このボデガを率いているのは4代目の娘のハイオネさん。工業エンジニアとして別のキャリアを歩み始めていた彼女だが、幼い頃から手伝ってきた家業に戻る決断をした。

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「これは単なるビジネスではなく、私たちの生き方(forma de vivir)そのものだから」

彼女のこの言葉に、世代を超えて受け継がれる当事者意識と、バスク女性のプライドが垣間見えた。


「熟成期間至上主義」からの脱却、スペインワインの『クレイジー』な醸造プロセスを見た へ続く)

『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』(水上彩著、ダイヤモンド社刊)
『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』(水上彩著、ダイヤモンド社刊)

【初めて書籍を執筆してみて 2 (続き)━━ジャンルを超えるからこその難しさと、自らの無知】

今回、初めて書籍『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』を執筆してみて感じたことを続けます。

ジャンルを超えるからこその難しさと、自分の無知

栽培や醸造などワインの世界に閉じず、その背景を見ていくと、面白いことが起きました。ワインについて調べていたはずなのに、気づいたらジョージアやウズベキスタンの歴史を読んでいたり、アメリカの禁酒法を調べていたり、物流や地政学の本を開いていたりする。ワインは単独では存在できない。どこかで必ず歴史や経済、政治などマクロの世界と繋がってしまうんです。

だからこその苦労もありました。いざ執筆を始めてみると、ワインのことだけでなく世界史や経済や政治についても調べる必要性が出てきて。調べれば調べるほど自分の知らないことばかりが見えてきて、「とんでもない企画を出してしまった……」と青ざめる日々。事実確認のためにAIを使えばしれっと嘘をつかれ、今となっては笑い話?ですが、初校や再校の仕組みもよくわかっておらず、担当編集者を困らせてしまったこともありました。

プレッシャーで毎日、パートナーには「人を殺したような顔をして仕事している」と言われたほどです。 同時に、執筆しながら私自身も、自分の「世界地図」を描き直しているような……日本にいながらにして毎日世界を旅している感覚を覚えました。

書籍に収まりきらなかったこと

編集部から「書籍に収まりきらなかったことは?」と聞かれましたが、正直に言えば、「ぜんっぜん文字数が足りない……」ということです。企画の段階でテーマは独断と偏見でかなりきっちり決めていたのですが、執筆を進めていくうちに「この話題も入れたい。もっと深く書き込みたい」と収集が付かなくなり……。結果的に、入れられなかった産地やテーマも多かったです。

優先したのは、「読者が旅をする感覚」。AIで検索すれば出てくるような教科書的な知識の寄せ集めでは意味がありません。そのため、私がこれまでワイン産地を旅してきた中で、五感で感じた経験や主観(勝手に「とろりとした情緒」と呼んでいました)を、客観的な事実のなかに2割ほど混ぜることを意識しました。少しエモーショナルな部分を残したからこそ、読み手が少し立ち止まり、世界を発見する余白を残せたと思います(続く)。

文=水上彩 編集=石井節子

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