錬金術の歴史が示す資源のパラドックスと地熱発電
一方、技術の急速な発展に伴う物理的かつ倫理的な課題も浮き彫りになった。米著名投資家のロバート・フリードランド氏は、11世紀の欧州における錬金術師の歴史を引き合いに出し、資源を巡るパラドックスを語った。当時、万物は土、空気、火、水からなるとされ、それに当てはまらない地中の未知の物質が「レアアース(希土類)」と呼ばれたという。現在、このレアアースなどを巡るサプライチェーンそのものが兵器化され、欧州の技術的自立を根底から脅かしていると警告した。
さらに同氏は、AI検索が通常のウェブ検索の20〜30倍という膨大な電力を消費するという残酷な現実を指摘した。持続可能な解決策として、パルス技術を用いて地球の深部を掘削するクリーンな地熱発電の構築を提唱した。また、同じパルス技術の農業への応用として、カメラ付きAIが雑草をピンポイントで認識し、電磁パルスで除草剤を一切使わずに駆除することで農業生産性を劇的に向上させる革新的な環境技術も紹介し、欧州がこうした分野をリードすべきだと訴えた。
ドローン兵器の非対称な脅威と欧州防衛の脆さ
フリードランド氏はまた、技術の進化がもたらす軍事的な脅威に対しても極めて厳しい見方を示した。米国の視点から見て、現在の欧州はドローン戦争のような新たな非対称の脅威に対して「本質的に無防備(defenseless)」であると強い言葉で警告を発した。
現代のドローン兵器は、個々の人間を正確に識別し、「第三の目(額)に小さな穴を開ける」ほどの恐るべき殺傷能力と精度を持つに至っている。AIの軍事利用が加速度的に進む中、他国が設計したインフラやハードウェアに依存し続けることは、単なる経済競争における劣位にとどまらず、欧州市民の生命と安全保障そのものを直接的に危うくする事態を招きかねないという、冷酷な現実が突きつけられた。
「乗客」からの脱却、自由な移動が生むイノベーション
会議の開催地であるルクセンブルク市の住民は約70%が外国籍で占められ、167の異なる国籍の人々が暮らす極めて国際的な都市である。市長は、気候変動から都市の森林を守る「for loops」プロジェクトや、GDPR(一般データ保護規則)に厳密に準拠した匿名のモバイルデータを用いて人流を分析し、都市計画に役立てる取り組みなど、データ主権を重んじた先進的な行政のデジタル化事例を紹介した。
シェンゲン条約がもたらした「自由な移動」の恩恵を最大限に生かし、世界中から優秀な人材や資本を引き寄せる戦略的装置として機能する「NEXUS Luxembourg 2026」。ルクセンブルク商業会議所のカルロ・テーレン ディレクターが力強く訴えたように、他国が設計し動かすインフラにただ乗り込むだけの「乗客」から脱却し、自らシステムを設計し支配する「建設者」にならなければならない。ルクセンブルクの比類なき開放性を実証の場とした、欧州のしたたかな技術主権確立への挑戦が今、本格化している。


