ビジネス

2015.11.06

120万円からの超高級スマホVertu 中国進出を加速

2012年に発売されたVertuのスマートホン<br />(Image via Vertu)



中国のリッチなスマホユーザーらに嬉しいニュースだ。ノキアの子会社として誕生したVertuは、スーパーリッチ向けに宝石で装飾した超高級Androidスマホを販売しているが、このたび香港企業のGodin Holdingsに買収された。これを機に、Vertuは中国進出を加速させると見られている。

ノキアは2012年、イギリスに本拠を置くVertuをスウェーデンのプライベートエクイティ、EQTに2億ユーロ(約264億円)で売却していた。る。今回の買収で、VertuのCEOであるMassimilanoPoglianiが退任するという。Vertuの800名の従業員のうち半数は田舎町のチャーチクロッカムにある本社に勤務している。

ここでは、特殊技能を持った職人たちが、高級時計作りで使われるスイス製のトルクドライバーを手に、傷の付きにくいサファイアガラスと、金やプラチナで縁飾りをしたキーボードを取り付けている。スマホの価格は、約1万ドル(約120万円)からスタートし、高いものは20万ドル(約2,400万円)を軽く超える。スタイルに徹底的にこだわり、デジタルな内部を豪勢なアクセサリーで覆っているのがVertuの製品の特長だ。中には、ピンクの縁飾りにワニ皮とダイヤモンドで装飾したスマホもある。

Vertuがターゲットにしているのは、iPhoneのように機能が優れたハイエンド機器であっても、誰でも所有しているものは買いたくないと考える富裕層だ。彼らは、自分が雇っている庭師が最新のiPhoneを持っているのであれば、自分はもっと良いスマホが必要だと考えるのだ。

ニッチではあるが、中国ではまだ拡大する市場だとGodin Holdingsは期待している。中国でのスマホ販売は減速しているが、金持ちの数はまだまだ増えているからだ。フォーブスのビリオネアリストでは、今年4月時点で中国のビリオネアの数は400人に達し、2014年の242人から大きく増加している。

スウェーデン企業の傘下にあった2年間、Vertuは端末のOSにAndroidを採用していたが、オーナーが変わった後も継続するかは不明だ。Androidになる以前のOSは、ノキアのSymbianだった。

Godin Holdingsの創業は2015年7月だが、Engadgetによると同社は単なるペーパーカンパニーで、その実態はGodin Cyberspace Security Technologyという会社のようだ。Engadgetは、香港の法人登記情報から両社の関係性を掴んだとしている。
北京を拠点とするGodin Cyberspaceは、6月にGOSというセキュリティを強化したスマホ向けの独自OSをリリースしている。このOSは、スマホ上の情報を暗号化し、端末が紛失したり盗まれたときには、データを削除できるという。

Vertuは、2013年からSilent Circleと提携をし、ユーザー向けにデータの暗号化サービスを既に提供している。しかし、新たにユーザーとなる中国人富裕層たちは、これまでよりも高い安全性を求めるかもしれない。活動家や公人が政府の監視から逃れようとするのはさておき、中国のスマホユーザーたちもセキュリティ問題には悩まされている。こうした現状を踏まえ、Godinの背後にいる起業家たちは、中国の超富裕層向けにVertuの新機種を準備しているようだ。それは、外見が派手なだけでなく、究極に安全な端末になると見られている。

文=パーミー・オルソン(Forbes)/ 翻訳編集=上田裕資

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