ブダノウ世代
この時期に頭角を現した将校の1人が、後にGUR局長となるキリロ・ブダノウだ。英紙タイムズによると、ブダノウは第2245部隊に所属していた。同部隊は2015年以降、CIAと緊密に連携していた精鋭軍事情報部隊であり、ロシアの軍事装備や通信システムなど、ウクライナと米国の情報機関が分析可能な資料の回収を専門としていた。ロシア軍の装備から収集された情報は、同国の能力に関する貴重な知見をもたらすとともに、ウクライナと米国の情報機関の協力関係を深める一助となった。
ブダノウはウクライナ東部で親ロシア勢力に対する作戦中に負傷し、米国のウォルター・リード国立軍事医療センターで治療を受けた。その後、GURの局長に就任した。
クリミア半島併合直後に訓練を受けた将校らは現在、ウクライナの情報機関や治安機関の要職に就いている。その多くは情報活動の立案者となり、GURやSBUで革新を促す競争文化を育んできた。
筆者の取材に応じたウクライナ安全保障・協力センターのドミトロ・ジマイロ副所長は、この競争関係は同国の安全保障機構にとって弱点ではなく、むしろ強みとなっていると説明する。「競争はあらゆる活動分野に存在し、ウクライナの治安機関や情報部隊の間にも見られる。これは極めて健全な仕組みであり、競争はより良い成果を出すための動機となる。競争は成果を妨げるのではなく、むしろ向上させるのだ」
こうした競争関係は、2025年6月にSBUが実施した「クモの巣」作戦をはじめ、ウクライナの大胆な作戦を生み出す一助となった。18カ月にわたる準備期間を経て、同国の工作員は無人機をロシア国内に秘密裏に運び込み、戦略爆撃機基地に連携攻撃を仕掛けた。これは、クリミア半島併合当時には想像もできなかったような能力を示すことになった。
信頼は勝ち取るもの
ウクライナの情報機関の能力が高まるにつれ、米国もその能力に対する信頼を深めていった。ボーガン元工作員は「情報上の協力関係は相互に発展するものだ。一方の側が継続的に有用な情報を提供し能力を実証すれば、もう一方の側も情報を共有しやすくなる」と説明した。
信頼と協力が拡大するにつれ、さらに機密性の高い情報や能力を共有しようとする意欲も高まっていった。ウクライナの機関は、単に米国の支援を受ける側ではなかった。ロシアの軍事・治安機関に関する貴重な情報を収集する中で、ウクライナと米国は絆を強め、関係は能力と情報の双方向のやり取りへと発展していった。ボーガン元工作員は「最終的には、その関係は単なる取引以上のものになり、変革をもたらすことになる」と語った。


