熱との戦い
ヒッグスによれば、アップルシリコン搭載Macの信頼性を支える大きな要因は、旧来のインテル搭載機に比べて発熱がはるかに少ないことだという。「私たちが見てきたインテル搭載機の最大の問題の1つは、加熱と冷却が繰り返される熱サイクルによって部品が故障することでした」と彼は語る。
ヒッグスによると、同社が熱関連のトラブルの急増に初めて気づいたのは2008年で、グラフィックスカードの熱がはんだ接合部の故障を引き起こしていた。この問題は2011年に再発し、アップルが集団訴訟に直面する事態へとつながった。
発熱が少なければ、アップルシリコン搭載Macのファンも(そもそも搭載されている場合でも)インテルプロセッサー時代に比べて負担が大幅に減る。ヒッグスによれば、ファンはインテル搭載機において「かなり多い故障箇所でした。背面を開けると、長年回り続けてきたせいで、ほこりやごみで完全に詰まっていることがありました」という。
今やMacBook Airのようなデバイスにはファンすら搭載されておらず、ファンを残しているMacも回転数は大きく抑えられている。「アップルシリコン搭載デバイスでファンが故障した例は、ただの1件も思い浮かばない」とヒッグスは語る。
向上したバッテリー寿命
アップルシリコン搭載Macの消費電力の低さには、もう1つの利点がある。バッテリーへの負担が軽いことだ。
ホクストン・マックスによれば、アップルシリコン搭載機は1回の充電でインテル搭載MacBookの約2倍長持ちする。そのぶん充電回数(バッテリーサイクル)が少なくて済み、バッテリーの状態も良好に保たれる。同社のデータでは、4〜5年使用したインテル搭載MacBookのバッテリーサイクル(バッテリーを使い切ってから完全に充電し直す一連の動作)は平均227回だったのに対し、同程度の年式のアップルシリコン搭載MacBookはわずか103回だった。
「バッテリー寿命を左右する主な要因は、充電サイクルの回数です」とヒッグスは語る。「インテル搭載機に比べてバッテリーがあまり使い込まれなくなったため、今ではバッテリーを交換する機会がかなり減っています」。
とはいえ、修理のしやすさという点で、アップルシリコン搭載Macが完璧というわけではない。プロセッサー、メモリー、ストレージがすべて同じメインボードに組み込まれたSoC(システム・オン・チップ)という設計のため、これらの部品の1つに不具合が起きると「修理が非常に難しい」とヒッグスは言う。たとえば最新のMacBook Proは、iFixit(アイフィックスイット)による修理のしやすさの評価で10点満点中わずか4点にとどまっている。
「修理する権利」を求める法規制が強まって以降、アップルは「修理しやすくしようと多少は努力するようになりました」とヒッグスは語る。とはいえ、そもそもデバイスがそう頻繁に故障しないことのほうが、関係者全員にとって望ましいのは間違いない。


