必要なのは、自ら選択して引き受けること
三牧:いまのアメリカでは、若い世代による雇用への期待は大きく下がっています。AIの浸透によって、本来は大学を卒業した新社会人が担っていた入門的な仕事が減るかもしれない。さらに家賃は上昇し、医療費も高いという現状があり、親世代より豊かになれるという物語は崩れました。
そのため、右からはトランプのように敵を名指しする政治が台頭する一方、左からは生活に必要なものを公共で支えるべきだという社会主義的な政治が登場する。アメリカでは、危機や不満がむき出しの争点になっているのです。
真山:日本では、争点化しないんですよね。先に話した地方交付税交付金の例にしても、高齢者医療の例にしても、社会はすでに選択を迫られている。それなのに、それが政治の舞台に落とし込まれていない。争点にならないから、「誰かが何とかしてくれる」という感覚が続いてしまう。
争点を作っていくことで初めて、「自分たちもいつか究極の選択を迫られるかもしれない」と考えながら生きることになります。『デフォルトピア』で財政破綻の後を描くにあたって読者と一緒にやりたいのは、まさにそこなのです。

真山仁(まやま・じん)◎同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な裏側を描いた『ハゲタカ』でデビュー。同シリーズはドラマ化、映画化され大きな話題を呼んだ。『マグマ』『ベイジン』『売国』『黙示』『そして、星の輝く夜がくる』『ロッキード』『墜落』『タングル』など著書多数。近著に『当確師 正義の御旗』『アラート』『ここにいるよ』『チップス/ハゲタカ6』『ウイルス』がある。クラウドファンディングの試み「日本の“破綻”を読者と共に描く 真山仁『デフォルトピア』共同制作プロジェクト」は支援金1300万円を突破している。
三牧聖子(みまき・せいこ)◎国際政治学者、同志社大学大学院教授。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科博士課程修了。米ハーバード大学日米関係プログラム・アカデミックアソシエイト、高崎経済大学准教授などを経て現職。専門はアメリカ政治外交史、平和研究。著書に『戦争違法化運動の時代』(名古屋大学出版会)、『Z世代のアメリカ』(NHK新書)、共著に『私たちが声をあげるとき──アメリカを変えた10の問い』(集英社新書)、共訳書に『リベラリズム 失われた歴史と現在』(青土社)がある。新刊に共編著『「アメリカの戦争」と世界危機──イラン侵攻は何をもたらすのか』(岩波新書)。


