経済

2026.08.17 17:45

日経平均7万円突破は通過点にすぎない…「インフレ回帰」が変える日本株の未来

Getty Images

この変化は株式市場でより鮮明だ。上述したように日経平均は1989年末の高値3万8916円を30年以上の長きわたり下回っていた。この間、未曽有の危機が幾度となくあったが、2024年2月に34年ぶりにその水準を超え、2026年6月に7万円台に到達。現在では6万5000〜8000円台を推移している。

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政府や市場が日本企業の資本効率改善を促していることや、世界的なAI・半導体ブームでその関連銘柄が押し上げている側面も確かにあるだろう。しかし、バブル期ピークのその水準に比べると日経平均は今なお1.7倍(TOPIXでは1.37倍)にすぎない。同期間の世界の株式市場で、米国が20倍超、ドイツが10倍超、中国は9倍の上昇だったのに比べると、依然としてこれから極めて大きな上昇余地があるのだ。

作成=スパークス
作成=スパークス

デフレ下では名目成長が抑え込まれ、日本企業は売上拡大ではなくコスト削減で利益を守るしかなかった。その結果、市場は日本企業を長く評価しなかった。しかし、この構図が変わり始めている。ようやく、日本株式市場は、過去30年に海外株式市場との間で積みあがったパフォーマンスギャップを回復するプロセスの初期段階に入ったのだ。

インフレ回帰への大転換で「価格上昇」を享受するのは日本

なぜ「価格上昇」を享受するのは日本だと言えるのか。背景には、日本が長期にわたり、世界的にも歴史的にも特異なデフレ経済を経験してきたことがある。賃金は上がらず、企業は内部留保を積み上げ、個人は現金を保有するという行動が合理的とされてきた。しかし、世界的な供給制約や地政学動向を契機にインフレ経済へと転じた今、他国と唯一異なる環境だった日本に最も追い風が吹いている、というわけだ。

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すなわち、30年以上にわたるデフレ環境下で日本は鍛えられた。ようやく通常のインフレ環境に回帰して、今後、日本企業はこれまでの数量拡大に加えて、他国企業では当たり前だった高品質な製品価格の引き上げによって売上成長を実現していく。これまで抑え込まれてきた設備投資や人件費の増加は、むしろ企業価値を押し上げる方向に働くだろう。また、個人の金融資産も再配分が進む。現金の実質価値が目減りするインフレ局面では、株式などリスク資産へのシフトが合理的になる。

実際、日本には2000兆円を超える個人金融資産があり、その大半はいまも現預金で保有されている。この資金が動けば、資本市場への影響は甚大だ。

グローバル資本の視点から見ても、日本の位置づけは大きく変わっている。これまでリスク資本は米国・欧州・中国に集中してきたが、インフレ環境の中で「安定性」と「割安性」を兼ね備えた市場として日本が再評価され始めている。長期デフレにより株式評価が抑制されてきた反動が、大きな資本移動につながっている。

価格が上がらないという日本特有の環境が、企業・家計・市場のすべてを歪めていた。今、日本はデフレからインフレという大転換点に立っている。この認識が今後の日本を見るうえでの起点となる。

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