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経済・社会

2026.06.23 13:15

『戦後敗戦』著者・船橋洋一が語る、地経学で見抜く「経済の武器化vs.日本」

船橋洋一氏 写真=的野弘路

――グレーゾーンから成功物語が数多く生まれるので、世界から優秀な人材が集まりやすいと指摘しています。一方で、日本では情報工学者で「Winny」開発者の金子勇さんを著作権法違反で逮捕してしまい、ソフトウェアの開発環境を揺るがしたという事件がありました。金子さんは42歳の若さで亡くなられています。この悲劇も、本書で語られています。

船橋:巨大な技術革新が生まれる時は、基本的に全部グレーゾーンです。これから生まれてくるものに、どういう法律を当てはめるかと後から追っかけていく。それを、法律違反と言われて、訴えて、3~5年と法廷闘争している間に、世界でデファクトが決まってしまう。事実上、市場が決まる。
 
そうなってくると、もう意味がなくなってしまうわけです。生成AIで「国々の興亡」がより加速していく中で、巨大な技術革新の社会実装において生じるグレーゾーンにおける、「リスクに対する寛容さ」が求められます。ネットとA Iを国富と国民福祉と安全保障に資するべく使いこなすには、ルールメイキングとガバナンス構築に全力をあげる必要があります。
 
――船橋さんがつくった言葉で面白いと思ったのが、「失敗上手」です。2000年に、孫正義さん、三木谷浩史さん、松本大さん、伊藤穰一さんら、日本のインターネット黎明期の旗手たちにインタビューをされた時の提言として述べてらっしゃいます。
 
船橋:実は自分でつくった造語ですが、自分で忘れていて使っていませんでした(笑)。グローバル志向のインターネットの起業家たちと出会い、「創造的破壊とよりよく共存する必要がある」と当時書いています。一定の失敗も事前に組み込む「失敗上手」になることを学ばなければならないと思ったのです。
 
――「上手に失敗すること」はあらゆるケースで学ぶべきでしょうね。
 
船橋:失敗というのを認めたくないのは人間誰も同じ。どの国も同じです。特に政府は認めたくない。国会で叩かれるから。メディアからも叩かれる。だから失敗と言わなくていいと思っています。
 
私は、日本は国民安全保障国家という国の形と、それから起業家国家という形の2つをやろうじゃないかという提案をしたのです。では、起業家国家ってどういう国家なんだと聞かれたら、やはり「挑戦と学習」だと思います。政府も挑戦に挑み、政府も学習する。
 
学習というのは失敗することなんですね。失敗という言葉は使わなくていいんです。だからこのそういうのをもっとやらないことには、政府も自分で調達して、市場もこれだけのものを補償するし補助金も出すということで、コミットするリスクを負うわけです。
 
マーケティングも含めて責任を負う。全部成功するはずはないから、何か齟齬があった時には、そのことも含めてちゃんと対応もできなきゃいけない。責任はもちろん取らなきゃいけないけれども、やっぱり1回失敗したからって、それが全てということではないと思います。
 
これからこのAIをはじめとした量子やバイオが入ってきて、丸ごと社会を変えるような巨大な技術が登場します。
 
その社会実装をこれから10年、20年、30年とやる中で、政府の形も含めて変えないと、やっていけないと思うのです。

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『戦後敗戦』(実業之日本社)は、7つの敗戦を解明している。
第一章 石油危機 高度成長の終焉
第二章 プラザ合意 「日米戦争」
第三章 半導体敗戦 「敵の敵は友」
第四章 湾岸戦争 「一国平和主義」の破綻
第五章 ネット敗戦 グローバル・スケール・セキュリティ
第六章 尖閣ショック 「力による現状への挑戦」
第七章 福島原発危機 「第二の敗戦」

また、各章ごとに「教訓」と後日談を含む取材ノートの振り返りがあり、過去と現在が繋がって読める。

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文=藤吉雅春

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