【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

経済・社会

2026.06.23 13:15

『戦後敗戦』著者・船橋洋一が語る、地経学で見抜く「経済の武器化vs.日本」

船橋洋一氏 写真=的野弘路

処方箋はすでにある――「リバースエンジニアリング」

――社会実装力の弱さを克服するためのヒントとなるキーワードがこの本には散りばめられていて、そこが面白かったです。例えば、リバースエンジニアリングです。
 
船橋:後発性の利益ですね。中国の飛躍はここにあります。1989年の天安門事件で孤立したものの、鄧小平が1992年に改革開放の加速を呼びかけ、2001年にWTO加盟によって海外からの投資資金と技術が流入した。アメリカでさえ、金融面で支えて、米中の強固な経済依存関係が世界経済を引っ張っていきます。
 
こうした中で「中国式特徴」というインターネット革命が起きました。一党独裁を守るための国民監視システムの構築と、経済的躍進の切り札としてのデジタル産業育成「リバースエンジニアリング」を恐れないマインドセットです 。 これは過激な発想のようでいて、変化への問いです。
 
――数年前に日本の総合電機の経営層に話を聞くと、初期開発投資が莫大になるから、やはり「リバースエンジニアリング」を意識していましたが、「それを言うと誤解を招く」という意識がありました。
 
船橋:他国をキャッチアップすることを「後発」として心理的に嫌がる傾向が日本にはあります 。しかし、リアリティチェックをすれば、今や米中のテック企業の方が遥かに先を行っている分野が多い 。
 
アメリカですら、今ウクライナ戦争で猛威を振るっているイラン製の安価なドローン「シャヘド136」などに対抗するために、そのドローンをアメリカ国内企業でリバースエンジニアリングして何百万台も安価に製造する体制に入っており、短期間での開発と配備に間に合っている。プライドを捨てて、良いものはパクる、リバースエンジニアリングから始めて追いつき追い越す、という貪欲なマインドセットが必要です。

advertisement
ハルキウ地方検察庁のドミトロ・チュベンコ氏が、ロシア製でイラン設計のドローン「シャヘド-136」(ロシアでは「ゲラン-2」として知られる)の炭素繊維の残骸を検査している。同検察庁は、将来的なロシアに対する戦争犯罪の訴追に向けた証拠として、ウクライナに向けて発射されたロシア製のドローン、滑空爆弾、ミサイル、ロケット弾のコレクションを保管している。2025年7月30日、ウクライナ・ハルキウにて (Photo by Scott Peterson/Getty Images)
ハルキウ地方検察庁のドミトロ・チュベンコ氏が、ロシア製でイラン設計のドローン「シャヘド-136」(ロシアでは「ゲラン-2」として知られる)の炭素繊維の残骸を検査している。同検察庁は、将来的なロシアに対する戦争犯罪の訴追に向けた証拠として、ウクライナに向けて発射されたロシア製のドローン、滑空爆弾、ミサイル、ロケット弾のコレクションを保管している。2025年7月30日、ウクライナ・ハルキウにて (Photo by Scott Peterson/Getty Images)

フェアユースと「失敗上手」という発想

――「フェアユース」というアメリカなどで使われる概念を紹介されています。
 
船橋:日本という国があまりにも几帳面に潔癖症で。すべて規制や法律に準拠してやってしまうと「ポジティブリスト」で、この書いてあるものはやっていいが、他のものは全部ダメとなってしまう。グレーゾーンを活かす例がアメリカのフェアユースです。著作権を持つ他社の著作を利用する際に、目的が「公正(フェア)」であれば、著作者の許可がなくてもいいというルールです。先行企業が市場を勝者総取りできるインターネット産業では、この効果は極めて大きい。
 

advertisement
次ページ > 「上手に失敗すること」

文=藤吉雅春

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事