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経済・社会

2026.06.23 13:15

『戦後敗戦』著者・船橋洋一が語る、地経学で見抜く「経済の武器化vs.日本」

船橋洋一氏 写真=的野弘路

中国と差がついたデジタル敗戦の敗因

――1990年代以降のデジタル・インターネット革命における日本の「ネット敗戦」について、戦後の敗戦の中でも「デジタル地政学は最大の敗戦」と捉えてらっしゃる。「半導体の敗戦」のように、世界ナンバーワンだった日本が負けに転じていくドラマとはおもむきが異なりますね。
 
船橋: 1990年代までの日本の敗戦には、「油断」と「増長」がありました 。「台湾や韓国に半導体やデジタルがつくれるわけがない」という、戦後成功物語の絶頂の残影(幻影)に浸っていたのです。
 
一方で、(1995年に)アメリカからインターネット革命が起きた時、バブル崩壊後の悪い時期と重なってしまった。
 
――90年代後半は、バブルの後始末だけでなく、金融危機など戦後最悪の倒産件数を記録した時代であり、就職氷河期に突入する時代です。
 
船橋:(そんな時代だったせいか)インターネットの社会実装が、コストカットといった「既存の業務の整理整頓(効率化)」に使われていった。インターネットは、本来、トランスフォーメーション(社会変革)で使わなきゃいけなかった。トランスフォーメーションに使ったのが中国です。現在の中国の巨大な経済のスーパーパワーは、インターネットなしに生まれなかったわけですから。
 
――効率化のためにテクノロジーを使う体質が、現在のAIに対する日本の姿勢にも共通している気がします。これは国民性なのか、デフレの後遺症なのかわかりませんが。
 
船橋:恐れているのはそこです。日本には優れた技術者がいます。しかし、決定的に弱いのが「社会実装力」です 。技術をいかにして社会に実装し、コマーシャル(ビジネス)として稼げる産業にするかという最後のステップが踏み込めない 。
 
――半導体もデジタル分野も、なぜ日本の経営は台湾や韓国勢の後塵を拝することになったのでしょうか。
 
船橋: 「マーケット論理の徹底」と「ファイナンス」ができなかったからです 。 かつてのソニーは技術の井深大氏とマーケティングの盛田昭夫氏という車の両輪がいたからこそ、「メイド・イン・ジャパンのイノベーション」を世界に実装できました。しかし半導体の時代になると、日本の半導体事業は総合電機メーカーの中の一事業部門に過ぎなくなってしまった。社長に就くのは重電系や通信系の出身者ばかりで、半導体出身の社長はほとんどいませんでした。
 
――本書でもTSMCが世界中の客を囲い込むマーケティングセールスについて、経産省の半導体行政の担当者の白旗をあげたような話を引き出していますね。
 
船橋:半導体は、凄まじい額の投資と速いサイクルを要求される特殊な産業です。それなのに、総合電機メーカーの中で「なぜ半導体だけ特別扱いするんだ」という横並びの意識が働き、迅速な巨額投資の決断ができなかった。この経営のスピード感、ファイナンス、マーケティングのパッケージ戦略で負けたのです 。

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文=藤吉雅春

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