マイクロン・テクノロジー(Micron Technology。ティッカーシンボル:MU)の記録的な業績の中心には、市場内部のひずみを浮き彫りにする極端な数字が存在し、投資家がなぜ慎重に進むべきかを物語っている。
過去1年間で+774.6%という驚異的な上昇を記録していることから、マイクロンの投資家が、素晴らしい将来を期待していることは明らかだ。同社は、メモリーチップに対するAI関連の旺盛な需要を追い風に、前例のない成果を上げている。しかし、期待がこれほど高まっているときこそ、目立つ売上や利益の指標だけでなく、その裏にあるストレス要因を吟味することが欠かせない。
メモリーを供給できている割合を示す指標「顧客需要充足率」
マイクロンにとって最も示唆的な数字は、損益計算書には表れない。それは「顧客需要充足率」(customer demand fulfillment ratio)、すなわち顧客が求めるメモリーの量に対し、マイクロンが実際に供給できている割合を示す指標だ。現在、この数字は著しく低い水準にある。
高い収益性を支える、大きな需給不均衡
直近の決算説明会で、経営陣は以前の発言を改めて繰り返した。複数の主要顧客について、同社が応えられるのは中期的な需要の50%から3分の2にとどまるというものである。この状況が今も続いているのかと問われた際、CEOは端的に「はい、この状況は変わっていません」と答えた。
念のため断っておくと、これは業務運営上の問題を意味するものではない。むしろ、現在のマイクロンの高い収益性を支えている、大きな需給のミスマッチを端的に示すものだ。あらゆる最終市場で需要が供給を大幅に上回っているため、同社は強い価格決定力を握っている。とはいえ、こうした状況は、いかに有利であっても永続することはまずない。
粗利益率81%は、不均衡が解消すれば過去並みに戻る可能性
この充足率のギャップこそが、同社の業績見通しを押し上げる原動力となっている。これによりマイクロンは、次四半期の売上総利益率(粗利益率)を約81%と見込むことができている。この高い見通しは、供給が制約された市場で価格を主導できる同社の力から直接生じている。
投資家にとっての懸念は、この不均衡が正常化に向かい始めたときに何が起きるかである。充足率が上昇に転じれば、それは供給が需要に追いつき始めているか、あるいはより深刻な可能性として、需要が弱まりつつあることを示すサインとなる。いずれのシナリオでも、同社が現在享受している高い価格水準に直接圧力がかかり、記録的な利益率の低下を招きかねない。
マイクロンに対する強気の見方は、すべてこの供給不足が続くかどうかにかかっている。同社株の評価は、過去の水準を上回る利益率を前提としており、決算説明会でアナリストたちは、過去の景気サイクルにおける利益率のピークが60%台前半にとどまっていたと指摘した。この過去のピークと、現在示されている81%という見通しとの差は、市場が正常化した場合に失われかねない利益が相当大きいことを物語っている。
「供給不足」の継続に賭けて約4兆円を投じる計画
マイクロンはこの環境が続くと見込み、生産能力の拡大に向けて2026会計年度に250億ドル(約4.03兆円。1ドル=161円換算)を超える設備投資を計画している。顧客の注文の50%しか満たせない状況への対応としては、妥当な判断だ。しかし、それは同時にリスクも高めることになる。追加の供給が市場に出回る前に市況が変われば、同社は悪化する市場のなかで生産能力を増やしているという事態に陥りかねない。
現時点では、供給不足は現実であり、かつ大きな利益をもたらしている。しかし、注視すべき重要な指標は利益率そのものではない。経営陣から「充足率が上昇し始めた」というシグナルが出されるかどうかだ。それこそが、綱渡りが揺らぎ始めた最初の兆候となる。



