人手不足や顧客ニーズの多様化、AIの進歩によって営業のあり方が大きく変わるなか、Forbes JAPAN 2026年8月号の第2特集では、時代の変化に即した営業改革に挑む企業を表彰する「NEW SALES OF THE YEAR 2026」を特集。そのネクストAI賞を受賞したのがフリーだ。
商談前に"次の一手"を示す新たなAIシステム「つばめサジェスト」を開発。AIが仮説設定を担い、人間が信頼関係を築く新たな営業モデルを実践する。
昨年「AIトランスフォーメーション賞」を受賞したフリーが、連続受賞を果たした。バックオフィス全般をカバーする「統合型経営プラットフォーム」を展開し、2026年3月時点で同社の課金事業所は71万社。この約1年間で14万社以上増え、その勢いは止まることがない。
今回新たに導入した「つばめサジェスト」は、顧客との対話データを蓄積した「つばめAUTO」をAIが分析し、商談前に営業担当者に"次の一手"を明確に示すシステムだ。例えば、提案可能なプロダクトや未解決の課題を画面上に表示する。
開発の背景には、ハイパフォーマーの行動分析があった。業務企画部部長の山本晴香はこう語る。「成果を上げる営業担当は、商談前に何を話し、何をヒアリングするべきか、仮説設定を行っている一方で、社歴の浅いメンバーは、マニュアル的な対応をしがち。そこで『つばめサジェスト』が仮説設定のサポートを行うことで、入社数年でも経営層への提案の質を上げることが可能になりました」。実際、リリースから半年あまりで商談獲得数は前年比約16.9%増を記録。売上高も前年同期比で29.5%増と着実に成果を上げている。
注目すべき進化はもうひとつある。「つばめAUTO」で蓄積したデータを、営業に閉じずプロダクト開発へ直接つなげる仕組みだ。AIが顧客との対話から課題を抽出し、1日500〜600件にのぼる情報をもとに開発優先度を判断する。
この「プロダクトフィードバック」を担うCS業務企画チームマネージャーの柴田誠也は、「単なる機能改善の要求ではなく、誰が何に困っているのかという具体的な声を開発チームに届けることで、より顧客の要望に沿った開発が可能になる」と「顧客への還元」にこだわる。機能のリリース時にはお知らせ画面で開発完了通知を伝える取り組みもあり、営業が顧客の要望を聞きっぱなしにせず、プロダクトの成長につなげることで、信頼関係の構築にも寄与している。
AIによるデータ活用を進める一方、顧客との接点をあえて増やす取り組みも行う。多くの企業が問い合わせ対応を自動化するなか、同社は人が直接対応する窓口を強化。顧客との対話を重視する。
ビジネス基盤本部長の平塚信明は、「AIが示す仮説をもとに、お客様自身も気づいていない潜在的な課題を引き出し、その知見を開発や提案に生かす。『顧客起点の好循環』をどれだけ回せるかが重要なテーマ」と語る。AIが業務を代替するのではなく、人にしかできない顧客理解をより深めるために活用する。フリーは、営業という職能の再定義を着実に進めている。
中央:山本 晴香(やまもと・はるか):ビジネス基盤本部 業務企画部 部長
右:平塚 信明(ひらつか・のぶあき):ビジネス基盤本部 本部長
左:柴田 誠也(しばた・せいや):ビジネス基盤本部 業務企画部 CS業務企画チームマネージャー



