人手不足や顧客ニーズの多様化、AIの進歩によって営業のあり方が大きく変わるなか、Forbes JAPAN 2026年8月号の第二特集では、時代の変化に即した営業改革に挑む企業を表彰する「NEW SALES OF THE YEAR 2026」を特集。そのバリューシフト賞に選出されたのが、リコージャパンだ。
複合機を中心としたモノ売りから、課題解決型へ。リスキリングと制度改革で人材を変え、営業とビジネスモデルを転換した。その先に見据えるのは、顧客の「経営のパートナー」というポジションだ。
創業90周年を迎えるリコーグループの中核企業、リコージャパン。2024年、25年と2期連続で最高売り上げを達成し、5年前に比べ、一人当たりの売り上げ、利益ともに40%向上も実現した。
好業績の裏には、全国に約340拠点、社員数1万7000人の国内最大規模のIT系ベンダーでありながら、これまでの複合機をはじめとするオフィス機器の販売やメンテナンスといった「商品」を起点としたモノの販売から、デジタルを活用した「課題解決」、コトのサービスへの大胆な転換がある。10年前にモノ6割、コト4割だった売上比率は逆転した。
ビジネスモデルの転換はOA機器市場の成熟や、ペーパーレス化の加速もあったが、「顧客の課題が高度化、複雑化するなかで、従来の知識だけでは解決できなかった営業現場の危機感が大きかった」と、デジタルサービス営業本部の本部長である石井晃は語る。
例えば、エンジニアは複合機のメンテナンスができればよかったが、ネットとつながったことでITを理解していなければ仕事にならなくなった。セールスも顧客の課題である法整備を含めた業界動向まで理解していなければ商品が売れなくなっていたからだ。
経営側も率先してリスキリング制度の充実など環境整備を整えた。
その中心となった人事・コーポレート本部の本部長で、デジタルサービス営業本部の副本部長である藤本恭一郎は、「デジタルサービス企業に変わるために、リスキリングできた社員を評価する仕組みを整えた。評価軸も“知識と技能と成果”を重視し、職種ごとに8段階からなるプロ認定制度を設けた」という。これらはすべて顧客の課題に応えるため。認定制度は状況が変われば要件も変わる。展示会では製品が消え、人が中心となった。顧客から課題を聞き、提案を行うことが第一義となったからだ。
営業体制も変え、アカウントの営業が顧客を訪れ、ニーズをとらえると専門性の高い人材につなぐリレー方式が取られた。個人のスキルに依存していた課題発見やソリューション提案もAIやシステムの活用、勉強会でのナレッジの共有で、再現性のある組織へと変革した。それは、人材育成に効果を発揮すると同時に、多くの企業が抱える「マネージャーの多忙による機能不全」問題の解消にもつながった。
営業の精度が高まったことで、受注単価も向上。昨年度は複合機の販売台数も2桁伸長した。しかし、時代の変化に伴い企業の抱える課題は複雑化する一方だ。だからこそ石井と藤本は、「経営のパートナー」という次の変革を起こそうとしている。
右:石井 晃(いしい・あきら):常務執行役員 デジタルサービス営業本部 本部長
左:藤本恭一郎(ふじもと・きょういちろう):取締役常務執行役員 人事・コーポレート本部 本部長 デジタルサービス営業本部 副本部長



