人手不足や顧客ニーズの多様化、AIの進歩によって営業のあり方が大きく変わるなか、Forbes JAPAN 2026年8月号の第2特集では、時代の変化に即した営業改革に挑む企業を表彰する「NEW SALES OF THE YEAR 2026」を特集。そのナレッジドリブン賞に選出されたのが、日本電気(NEC)だ。
経営改革とDXで時価総額を一時11倍に伸ばしたNEC。6000人規模の営業組織を変革した原動力は、現場に眠る“秘伝のタレ”の可視化と共有にあった。
巨艦ほど針路を変えるのに苦労する。しかし、それを見事にやってのけたのがNECだ。同社は経営不振から2012年に構造改革を断行。カルチャーをつくり直すところから変革に取り組んできた。
難しいのは、変革の最中にも潮流が変わることである。10年代後半には単なるIT化にとどまらないDXの波が到来。NECはこの波を的確にとらえることに成功したという。変革を主導したトランスフォーメーションオフィスのリーダー、CAXOの小玉浩はこう語る。
「お客様のDXを支援するには、まず私たち自身が“クライアントゼロ”、つまり0番目のクライアントとしてDXを実践して企業価値を高め、そのナレッジを取り込む必要がありました。そのアプローチが功を奏し、2018年度は売り上げ2兆9134億円、調整後営業利益699億円だったのが、25年度は売り上げ3兆5827億円、調整後営業利益3868億円に。時価総額は、2017年時点と比べ、一時11倍以上になりました」
NECの変革はあらゆる領域で行われた。そのなかのひとつが営業改革である。
かつては営業BU(ビジネス・ユニット)があり、事業や製品の部門と組織が分かれていた。製品を売る物売りなら、その体制でも機能した。ただ、クライアントゼロで培ったナレッジを顧客に還元するのに旧来の組織体制はそぐわない。価値を届ける営業へと変革するため、22年にトランスフォーメーションオフィスが営業支援に伴走する体制へと変更。2025年度、トランスフォーメーションオフィスによる営業支援回数は1400回に達した。
手を入れたのは体制だけではない。トランスフォーメーションオフィスが営業支援に入ることに先駆けて18年に営業支援システムを刷新。セールスフォースをベースに構築した「MIP-NEXT」を活用し、営業の効率化や高度化に取り組んだ。
実は最初から苦労した。営業変革プロジェクトに初期から従事したセールスDX推進グループのディレクター、近藤吉毅はこう明かす。
「システムを入れただけの段階では、現場にはデータ入力を面倒がられたし、“やらされ感”につながり適切なデータが入らない、入らないから余計に経営判断につながらない、という悪循環でした」
定着が遅れた要因のひとつは、営業プロセスを全社で管理する責任部門が存在せず、当時システム導入と展開をマーケティング部門で主導したことだ。近藤は「いかに営業と親和性の高い部門とはいえ、営業の業務とIT変革をマーケティング部門から進める難しさは常に感じていた」と振り返る。
活用が加速したのは、プロジェクトがトランスフォーメーションオフィスに移管されてからである。リーダーの小玉が決めたのは、寄り添う事業部門を絞ること。以前は全社一律・全方位で活用を進めていたが、NECは営業システムの登録IDが約6000という巨大組織であり、まんべんなく変革を進めるのは難しい。民需・公共系など4年間で6つの事業部門に絞って徹底的に伴走した。



