【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

ビジネス

2026.06.22 09:33

巨大煙突が崩れ落ちた日──オーストラリア、再生可能エネルギー新時代へ

stock.adobe.com

stock.adobe.com

先月、リデル石炭火力発電所にそびえ立っていた高さ約150メートルの巨大な煙突2本が轟音とともに崩れ落ちた。AGLエナジーが運営していたこの発電所は3年前に廃止されており、今回の解体はシドニーから北へ約3時間の中規模都市マスウェルブルック近郊に約52年前に建設された、計2000MW(メガワット)、すなわち2GW(ギガワット)の蒸気タービン4基の撤去作業の第一段階である。

エネルギー大手のAGLは、老朽化した設備は故障が頻発し、信頼性が著しく低下していたと説明した。では、このエネルギー大手AGLはどこへ向かおうとしているのか。そしてオーストラリアは石炭から再生可能エネルギーへの移行においてどのような道を歩んでいるのだろうか。

AGLの移行計画

AGLエナジーはオーストラリア最大級のエネルギー事業者であり、家庭や企業に電力、天然ガス、通信サービスを提供している。AGLは国内最大の二酸化炭素排出企業であったが、現在は再生可能エネルギーへの移行を進めている。石炭火力発電所の閉鎖を進めると同時に、風力・水力発電や系統用蓄電池への投資を行っている。

AGLには石炭火力発電所が2カ所残っている。ニューサウスウェールズ州のベイズウォーター発電所は2033年に、ビクトリア州のロイヤンA発電所は2035年に退役する予定だ。

完全解体後、リデルの跡地はハンター・エナジー・ハブに生まれ変わる。その中核となるのは、今年初めに稼働を開始した出力500MW、2時間分の電力供給が可能な大規模系統用蓄電池だ。さらに、8時間分の貯蔵が可能な揚水発電プロジェクトの開発も計画されている。

しかし主な目的は、新産業を支援するための土地、水資源、送電網の再整備にあるようだ。マスウェルブルックのジェフリー・ドレイトン市長は、この地域に企業が続々と進出していると述べ、「再生可能エネルギー部品の製造やリサイクル事業、さらには食肉加工場や養鶏場といったアグリビジネスなど、40社以上の企業が関心を示している」と語った。

オーストラリアの移行計画

オーストラリアは石炭大国である。輸出額ベースで世界第1位の石炭輸出国であり、その額は430億〜550億ドル(約6兆3000億〜8兆円)に上る。主な輸出先は日本、中国、インド、韓国だ。石炭は長らくオーストラリアの電力市場の中核を担ってきた。しかし変化が訪れている。国の東部にある石炭火力発電所の少なくとも半数が、今後10年以内に閉鎖される予定だ。インフラは経年劣化が進み、より安価な再生可能エネルギーとの競争に耐えられなくなっている。

政府とエネルギー企業は太陽光・風力発電所、大規模系統用蓄電池、新たな送電線の整備を進めてきた。AGL自身も今後10年間で12GWの再生可能エネルギー設備を建設する計画だ。

驚くべきことに、過去6カ月間でオーストラリアの主要送電網における再生可能エネルギーと蓄電池の供給比率が50%を超えた。これは史上初めてのことである。では電気料金はどうなるのか。朗報として、卸電力価格の大幅な下落が7月以降、消費者に還元され始める見込みだ。

もうひとつ意外な事実がある。米国の電源構成において、太陽光・風力・蓄電池の割合は2026年時点で全体の19%にとどまっており、オーストラリアの水準を大きく下回っている。

ただし逆風もある。オーストラリアでは石炭火力発電所のさらなる閉鎖により、許認可の遅延、設備不足、建設コストの上昇といった問題から電気料金が高騰するリスクがある。これらはガス火力発電所の拡大を阻んできたのと同じ問題だ。専門家は投資の拡大が必要であり、再生可能エネルギー事業者による共同行動が急務だと指摘している。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事