勝敗は最後までわからない
両ブランドはSNS戦略でも異なるアプローチをとっている。アディダスは5月、動画の最初の発表媒体にインスタグラムを採用。シャラメもインスタに短いティーザー動画を投稿した。生成AIのGrokによれば、再生回数は本記事執筆時点で5600万回を超えている。
ナイキは発表媒体にYouTubeを選んだ。再生回数は本記事執筆時点までに7600万回以上を記録し、アディダスの動画のYouTube再生回数の10倍以上を数える。総合するとSNSでの勝負はナイキに軍配が上がったようだ。
「YouTubeを成功の尺度とするなら、初期の反響を見る限りナイキがアディダスを大きく上回る成果を上げるだろう」とレプトラックのハーンは分析する。「だが、成功の定義を出場48チームの公式ユニフォーム提供契約数やサッカー関連グッズの世界的な売上高に置くなら、アディダスが商業的な勝者となる可能性が高い」
ハーンは、ブランドとして世界2位の評価を誇るアディダスの評判はW杯を通してさらに強固なものになると指摘。ナイキもW杯を機に評判が上がり、感情的な共感が高まるだろうが「アディダスの世界的な評判の高さに挑むレベルにはまだ達していない」との見方を示した。
今大会でスポンサーを務める全ブランドの経済的潜在力について、会計・コンサルティング大手EY(アーンスト・アンド・ヤング)のグローバルシニアコンシューマーアナリストのジョン・コープステイクは「前回大会より規模が大きい。前回を上回る収益を生み出し、利益や損失も前回より大きくなる可能性がある」と分析する。
どのブランドにとっても、今大会は大きな賭けになる。しかし、おそらくアディダスとナイキほどリスクを取っているブランドはないだろう。ナイキのマーケティング力は絶頂期にあり、テンポが速く遊び心に満ちた攻めの姿勢で臨んでいる。一方、アディダスのストーリーテリングはより感情に訴えかけ、よく使われるマーケティング用語を借りれば、より「本物」に感じられる。
ナイキは依然としてランニングとバスケットボールの「マルチバース」に君臨しているかもしれないが、世界で最も人気の高いスポーツであるサッカーにおいては、いまだアディダスが権勢を振るう世界に挑戦する立場なのだ。


