マーケティング

2026.06.22 06:30

マーケティングの組織図が「間違ったマーケター」を生み出している理由

stock.adobe.com

stock.adobe.com

組織のなかでマーケティングが行われるあり方が、いま変化しつつある。その兆候は2年以上前から現れていた。「マーケティングエンジニア」はB2B企業でいまや実在する職種名となり、「AIオペレーションマネージャー」も同様である。だが、これら2つの機能は、いまだ多くのマーケティング部門が前提としているファネル型の組織図のどこにも収まらない。それが現実的な問題になりつつある。

私のエージェンシーは、マーケティングプロセスの各段階でクライアントを支援している。部門が市場の変化にどう適応しているかを最前列で見てきた立場にある。ここでは、マーケティングチームがファネル型の組織図からどのように脱しつつあるのか、そして採用がいま、また近い将来にどのような姿になると私が見ているのかを述べたい。

ファネル型組織図がなぜこれほど根強いのか

スタートアップには、時代に合わせてマーケティングオペレーションを構築できるという利点がある。一方で大企業は、はるかにゆっくりしか動かないものに部門構造を結びつけがちだ。予算、人員数、そして特定の業務分担を前提に構築されたキャリアラダー全体である。

歴史的に見れば、そうした部門は、予測可能なカスタマージャーニーと、ファネル各段階における行動を前提に組み立てられてきた。デマンドジェネレーションマネージャー、SEOスペシャリスト、フィールドマーケターは、実在するキャリアであり実在する給与レンジがある。しかしそのいずれも、購買者の行動をもはや反映していないマーケティングモデルにひもづいている。

変化を強いる圧力

いま、エンタープライズ企業のマーケティング部門にかかる圧力は大きく、しかも複数の方向から同時に押し寄せている。

5月に発表されたGartnerの「2026 CMO Spend Survey」によれば、マーケティング予算は今年、企業売上高の7.8%で、実質的に横ばいのままだという。同時に、最高マーケティング責任者(CMO)はマーケティング予算の平均15.3%をAI施策に振り向けるようになっている。

その資金はどこからともなく湧いてくるわけではない。既存の予算項目から再配分されるのであり、多くのマーケティング組織では、それは人員と外部エージェンシーを意味する。Gartnerが調査したCMOの半数超は、2026年の戦略を実行するのに必要な予算が不足していると答えた。

再編なしに計算は成り立たない。私が並行して見ているのは、2つの明確な変化だ。1つは組織図の縦軸に沿ったもので、スペシャリストがより技術寄りになっている。もう1つは横軸に沿ったもので、実務的な判断業務の新たなレイヤーが生まれている。

縦軸のスペシャリストはより技術志向に

縦方向のレイヤーにおける変化は、新たに生まれている職種名に最も顕著に表れている。これらの新興ポジションは、かつて3〜4人に分散していた仕事を単一の役割に集約し、はるかに高い技術水準を求める。

例としてマーケティングエンジニアを挙げよう。この機能は2年前には実質的に存在していなかった。この役割はAIワークフローを設計し、スタック全体の統合を担い、キャンペーン実行をエンドツーエンドで動かすエージェント型パイプラインを構築する。マーケティングに所属しているというだけで、実態は応用エンジニアに近い。多くのデマンドジェネレーションマネージャーは、スキルアップだけでその役割になれるわけではない。

同様の仕事の圧縮は検索領域でも起きている。AEO/GEO検索リードは、従来のSEO、アンサーエンジン最適化(AEO)、生成エンジン最適化(GEO)を単一の役割へと取り込む。Lumarが20数名のSEOプロフェッショナルを対象に実施した調査では、81%が2026年に向けた優先事項トップ3として、GEO、AEO、AI検索スキルを挙げた。

ライフサイクルマーケティングも同じパターンをたどり、おそらく最も進んだ領域でもある。かつては、販売後のメールやリテンション施策を意味していた。現在の役割は、獲得、リテンション、拡大のインフラを、単一の技術責任者のもとに集約する。この仕事を担う人物は、CRMアーキテクチャ、実験、ジャーニーオーケストレーションを1つのシステムとして運用している。以前ひもづけていたファネル段階が、もはや独立した段階として機能していないからだ。

横方向のオーケストレーション層が生まれている

物語の一貫性や編集方針といった、かつては「ふわふわしている」と退けられがちだった役割に、新たに具体的な名称と職務記述が与えられ、測定可能なパフォーマンス指標が付随するようになっている。

Deloitteが2026年1月に公表した「State of AI in the Enterprise」レポートは、AI統合を軸にした新興職種のカテゴリーを示している。AIオペレーションマネージャー、ヒューマンAIインタラクションスペシャリスト、クオリティスチュワードなどである。これらの役割はAIエージェントを管理することではない。判断機能である。AIが生成したアウトプットのうち何を世に出すのか、何を止めるのか、そして複数の接点にまたがって首尾一貫した物語として何が成立するのかを決めるのが、これらの役割を担う人々だ。

この特定の判断レイヤーの必要性は、抽象的な話ではない。SalesforceのBobby Jania(Salesforce Agentforce Marketing CMO)は最近、端的にこう言った。「私たちは歴史上最も強力なテクノロジーを使って、より多くの一方通行のスパムを、より速く送っている」。横方向のレイヤーは、そのギャップを埋めようとする試みとして組織が用いているものだ。

私は、次の10年のマーケティングリーダーシップはここに集中すると予測している。縦の実行レイヤーがより技術的な専門分化へと断片化するなかで、物語を所有することがマーケティング組織を横方向につなぎ留める。

今後、採用はどう変わりうるか

マーケティング部門でAIの波に乗ろうとするリーダーにとって、AI能力を単一の役割に素早くパッケージ化したくなる誘惑があるのは理解できる。だが私が目にしている実際の変化は、AI能力は部門の隣に置かれるものではなく、部門全体に行き渡っていなければならないということだ。

最も難しいのは、どの役割を新設するかを決めることではない。集約された縦の役割、そして上位の横の役割を説得力をもって担える人材は、まだそれを生み出す確立されたキャリアラダーが存在しないため、最初から訓練済みで入ってくるわけではないという点である。自然な供給源はファネル中流の段階であるはずだったが、そうした役割は締め付けられている。リーダーは実質的に、リアルタイムで徒弟制度を組み立てている状態だ。つまり、次の2年のマーケティング組織設計は、誰を採用するかよりも、何を社内で育成する意思があるかによって定義されることになる。

マーケティングファネルは、常に購買者がどう動くかを示す地図であった。マーケティングチームをどう編成すべきかの設計図では決してなかった。私は、未来のマーケティング組織図はファネルというよりフレームに近いものになると見ている。両端により深い縦の柱があり、上部を横断する判断のレイヤーがあり、そして、もはや存在しない段階間の引き継ぎを管理する中間の人数は大幅に少なくなる。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事