コーベンの小説を25年間愛読してきたというハルは、数年前に交わした会話を振り返った。作家から、後に『捜索者の血』となる新作に取りかかると聞かされたのだという。
「彼からそのストーリーを聞かされて、私は正気を失いそうになった」とハルは回想し、「『誰にもその話をしないと約束してほしい』とコーベンに頼んだ」と付け加えた。「『今すぐNetflixに電話しよう。この小説の映像化に参加したいんだ!』と言った。憧れのヒーローのような存在と、プロジェクトの立ち上げから一緒に仕事ができるなんて、そうそうない機会だから」
ハルは、この物語の「信じられない」前提にすぐ引き込まれたという。
「この人物は……単なる逃亡者ではない。無実を証明する以上のものがある。それは、息子を見つけることだ。そして1人の父親として思うのだが、多くの父親は、子どものためなら喜んで銃弾を受けたり、命を投げ打ったりするだろう」
それより恐ろしいのは、命を危険にさらす選択肢さえないことだ、とハルは付け加えた。
「デヴィッドが言うように『父親の仕事は子どもを守ることだが、私はそれができなかった』。過去を変え、最悪の過ちを正し、人生で最悪の出来事を正せる……現実の人生で、人はそうした機会を得ることは滅多にないのだから」
この前提は、ハルの心に深く響いた。
「彼からこの構想を聞いたとき、まず何より『私なら見る』と確信した。そしてそれが判断基準(バロメーター)になるのであれば、ほかの人々も見るはずだと思った。なぜなら、これはあまりにも普遍的なアイデアだからだ」
複雑に織り成されたストーリーをどう構築するのかと問われると、コーベンは自身の創作プロセスをこう説明した。
「私の秘伝の要素、もっとも秘密というほどのものではないし、私だけがやっているわけでもないが、私は書き始める前に結末を知っている。多くの作家はそうではない」
コーベンは、2026年後半に回想録兼マスタークラス『Plot Twist: Life, Craft, and the Messy First Draft(原題)』の刊行を予定している。同書のリサーチのために多数の作家へインタビューを行い、執筆開始時点で結末を知らない作家はおよそ65%で、知っている作家は35%だと見積もったという。
これまでに書いた38冊のうち、結末を知らないまま書き始めたのは1冊だけだ、とコーベンは語った。
「結末がわかっていると、わかっていない場合に比べてはるかに起伏に富んだ旅路を描ける。結末を知っているという確信があるからこそ、物語を進めながら大胆な展開や紆余曲折を織り交ぜていける」


