こうした事態は今後も繰り返されるだろうし、次の衝突はサイバーセキュリティとはまったく無関係かもしれない。病原体を設計できるモデルかもしれない。電力網をひそかに操作するモデルかもしれないし、大規模な世論操作を運用するモデルかもしれない。いずれの場合も、大半の政府機関が抱えていないレベルの高度な技術的知見が必要となる。さらに、よくても曖昧な法的権限と、いつも遅れて整う類の国際協調も必要になる。
今この瞬間こそ、政府が本格的な評価能力──例えばリリース前のテストなど──を構築し始めるべき時かもしれない。だがより可能性が高い近い将来の道筋は、後手に回る形だろう。各機関が、それぞれのモデルが市場に投入された後で追いかけることになる。
ディープマインド自身の結論も、安心材料を与えてはくれない。AGI のその先に備えるには、予測(フォーキャスティング)、ベンチマーク評価、継続的なモニタリングが必要であり、加えて、その成果を政策に迅速に反映する能力が求められる。しかも研究所と政府と研究コミュニティの全体で同時にそれを行わなければならない、と著者らは書いている。彼らはこの課題を、「高速で進む技術的軌道」を進むことだと表現している。この言い回しは、技術の動きを注意深く見守り、その変化に合わせて調整する以外に、誰にもほとんどできることがないという現実を認めるものでもある。
Fable 5は遠からずニュースの見出しから消えていくだろう。だが、今後繰り返されるパターンを予告する有用な事例だ。3日間のうちに、ある製品リリースは輸出規制の問題となり、コンプライアンス対応の混乱となり、地政学的な事案にもなった。終わってみれば、企業と政府は、本来なら公開前に決着しているべきだった基準について交渉していた。同様の事案は今後も繰り返されるだろうし、規制側のルール策定が追いつくのを AIラボが待って歩みを緩めると期待する理由はほとんどない。


