私は他のCEOと多くの時間を過ごしているが、AIの話題が始まるときには、ほとんど台本があるかのようだ。誰もがその重要性に同意し、誰もが予算を確保し、誰もが計画を持っている。だが、もう少し踏み込んで「いま、あなたのチームの日々のワークフローの中でAIはどう使われているのか」と聞くと、話は途端に曖昧になる。
私の観察が事実だと言うつもりはない。しかし、この問題に気づいているのは私だけではない。リーダーがAIについて信じていることと、従業員がAIを通じて経験していることには大きな隔たりがある。そしてCEOがその溝を埋めない限り、AI戦略はプレゼン資料の中に閉じ込められたままだ。
CEOが責任を引き受けるときに「最終責任は私にある」といった言い方をするのと同じように、実務的なAI戦略についても私たちは当事者として引き受けなければならない。誰かが解決してくれるのを待つ時代ではない。
CEOはAIの価値を理解しているのに、なぜ導入は停滞しているのか
AIに対する経営層の支持が不足しているわけではない。BCGの最新の「AI Radar」調査によると、82%が1年前よりAIに対して楽観的になったと回答している。約4分の3が自社におけるAIの主要な意思決定者は自分だと答えており、これは前年の2倍の数字である。半数は、AIを正しく扱えるかどうかが自らの職の安定に影響すると考えている。
一方で、従業員レベルではまったく異なる光景が広がっている。当社の最近の調査では、オフィスワーカーの46%が、職場で使っているAIツールの一部または全部が雇用主から提供されたものではないと回答した。ガバナンスもガードレールもないまま、各自が自分の時間で自分のツールを見つけているのだ。
職場で生成AI(GenAI)を使う従業員のうち、約3分の1はそれを雇用主に隠している。静かな優位性を持てることを好む人もいる。しかし30%は、AI利用が自分の仕事を危うくすると恐れて隠していると答えた。
人々はAIを使いたいのだ。しかし彼らは立ち往生している──許可を待ち、ツールを待ち、仕事の中でどう位置づければよいかを誰かが示してくれるのを待っている。そして待ち時間が長くなりすぎると、彼らは会社を迂回して行動し始める。
従業員はあなたの行動を見ている
私は以前から、会社はチェックリスト片手に運営できるものではないと信じてきた(いまなら、そのデジタル版でも同じだ)。営業やオペレーションに携わっていた頃、私は、監督するだけでなく実際に手を貸し、自ら問題を見つけるリーダーに敬意を抱いていた。
AI導入も同じ原理で動く。CEOが基調講演でAIを語っても、経営陣の誰も日々のワークフローでAIを使っていなければ、従業員は気づく。
BCGは、リーダーがAIへの強い支持を示すと、AIに前向きだと感じる従業員の割合が15%から55%へと跳ね上がることを明らかにした。しかし、最前線の従業員でそのような支援を受けていると答えたのは約4人に1人にとどまる。
研修も同様の状況にある。当社の調査では、44%の企業が組織全体でAIに投資しているが、従業員にはツールを効果的に使うための十分なスキルが欠けていることがわかった。企業はAIに小切手を切っておきながら、従業員には自分で何とかするよう放置しているのである。
人々は置き換えを恐れている。無視すれば、状況は悪化する
AI導入に対する最大の逆風の1つは、CEOが正面から向き合う覚悟を持たねばならないものだ。従業員は恐れている。彼らも私たちと同じ見出しを読んでいる。Pew Researchの調査によれば、米国の労働者は職場でのAIについて、いまや期待よりも不安のほうが大きい。当社の調査でも、29%の従業員が、GenAIによって自分のスキルが雇用主にとって価値を失うのではないかと懸念している。
私には3人の娘がいる。父親として痛感させられてきたことの1つは、人は──子どもであれ従業員であれ──率直な答えを必要としているということだ。何が変わり、なぜ変わるのかを知る必要がある。空白を放置すれば、人はしばしば最悪のシナリオでそれを埋めてしまう。
当社の調査では、オフィスワーカーの半数超が「仕事の効率が上がっても、雇用主は単に仕事量を増やすだけだ」と答えた。これは、従業員がAIによってより多くをこなせるようになっても、報われる代わりに追加の仕事を押し付けられたり、最悪の場合は職を失ったりするのではないかと心配していることを示している。
AIで実際に進展を遂げている企業では、リーダーがAIの役割を明確に説明している。AIは、データの仕分けや簡単な依頼への対応といったルーティン業務を担い、人は判断と創造性を要する仕事に集中できるようになる。
こうしたリーダーは「置き換えられるのか」という問いにも、正面から答える。
ガードレールが信頼を築く
私の知る多くのCEOは、スピード重視の性格にできている。理解できる。私も同じだ。だが、構造のないスピードは、予算のついた混沌にすぎない。
2026年初頭のEYの調査では、部門レベルのAI施策の半数超が、正式な承認や監督なしに進められていることがわかった。また、78%のリーダーが、AI導入が関連リスクを管理する能力を上回るスピードで進んでいると答えている。
一過性で通り過ぎるだけのリーダーと、持続的な成果を重視するリーダーの間には大きな違いがある。優れたAIガバナンスも同じ原理で機能する。AIがアクセスできるデータ、AIが自律的に下せる意思決定、出力をどうレビューするか──こうした明確な方針が、導入を持続可能にする。従業員がツールを信頼する理由を与える。そして、信頼こそが大規模な活用を促進する。
CEOは有言実行しなければならない
BCGの調査によれば、Cレベルの経営幹部がAIに深く関与している企業は、そうでない企業に比べて、業績で上回る可能性が12倍高い。12倍である。
私にとって重要なのは「深く関与している」という表現だ。自分自身でツールを使うこと。チームと席を並べ、彼ら固有のワークフローの中でAIがどう見えるのかを一緒に考えること。質問し、耳を傾け、人々の声を聞くことだ。
AIは働き方を変えつつある。私が思うに、成功するのは、CEOが現場に踏み込み、チームを支え、学びと実験が安全にできる環境をつくる企業である。それこそが、本当の意味で前進を可能にする。



