登山口には再び人があふれている。米国山岳地帯西部と北東部の各地で、夏になると奥地の山野に人々が入り、クマと遭遇しやすい最盛期を迎える。たいていの場合、どちらも相手を探しているわけではない。人間のレクリエーションとクマの生態という2つの別々の暦が同じ夏の数週間に重なり合い、温暖化する気候が、いつ、そしてなぜ両者が出会うのかを変えつつある。
クマにとって夏は、冬を生き延びるために必要な脂肪を蓄える、季節終盤の過食期(ハイパーファジア:冬眠前にクマが猛烈に食べ物を探す時期)に向けた助走期間である。空腹には「予定表」がある。クマの食欲は夏の間に高まり、秋にピークを迎える。大型のヒグマなら、ほぼ一日中食べ続け、1日に数万kcalを摂取することもある。人々がトレイルにやって来るのは、そうした空腹が増していく時期と重なる。
人が増え、クマの「一年」が長くなる
両者がより頻繁に出会う理由は2つある。1つは私たち人間だ。1世代前に比べ、クマの生息域の近くに住み、そこを移動する人は増えている。先進国では、まれに起きる襲撃の多くが、ハイキング、キャンプ場への旅行、犬の散歩といった日常的な活動中に発生している。
もう1つは、クマの活動期間が長くなっていることだ。カナダ・アルバータ州のある個体群では、2016年の推定で、春の気温が4℃上昇すると、冬眠から目覚める時期が約10日早まると推定された。温暖化と人間の食べ物へのアクセスは冬眠期間を短くすることもあり、そうなる地域では活動期がさらに延び、人が屋外で過ごす月により多く重なる。
夏に餌が不足するとき
重なり合う期間が長くなり、混雑が増しても、クマが十分に餌を得ていれば静かなままだろう。実際、多くの年はそうである。問題は、野生の餌が不足する年に起きる。温暖化によって春の生育が早まり、クマが頼るベリーや木の実が、その後に強い寒波が来ると被害を受けやすくなる。ネバダ州北西部では、2025年の研究が、春の終わりに遅霜や凍結が起きる年ほど、人間との衝突が増加し、管理当局によって殺処分されるクマも増えることを示している。
干ばつも同様の作用をもたらす。ニューヨーク州では深刻な衝突は7月から9月に集中し、乾燥した年に増える。最も明瞭な例の1つが、ブリティッシュコロンビア州のサケが遡上する沿岸地域だ。2016年の研究で判明した内容によれば、サケの遡上が半減すると、人との衝突で殺されたクマが約2割増える。8月に野生の餌が足りないクマは探索を始め、その行き先が町の方向になることがある。



