出世より仲間を選ぶキャリア観
同じ傾向は、キャリアの志向にも表れている。将来管理職になりたいという新入社員が選んだ理由では「仲間と仕事をするのが好きだから」が34.4%で初めてトップに立ち、2020年以来トップだった「人を束ねて大きな仕事をしてみたいから」(33.3%)を初めて抜いた。

スペシャリストとして専門職の道を進みたいという新入社員が選んだ理由では「いざというときに専門性を活かしたい」が61.2%で他を大きく引き離し、12年で最高値となった。一方、12年前にトップだった「ひとつの分野を追求してみたいから」(31.6%)は19ポイント減少している。

出世そのものよりも、仲間との関係や、いざというときの拠り所を求める意識が、キャリア選択の段階からにじみ出ているようだ。
後退する「成長」という条件
さらに見過ごせない動きがある。今の会社で働き続けたいと思う条件のうち、「仕事を通じて成長できる」と答えた割合は31.6%で、6年前から13.8ポイント下がっている。「やりたい仕事ができる」(23.6%)、「頑張りを認めてもらえる」(22.3%)も同様に減る傾向だ。
前述した、思う会社の雰囲気・文化についての設問でも「高い目標に向かい切磋琢磨して成長する文化がある」(22.0%)や「新しいアイデアや創造性を推奨する文化」(21.4%)は前年から後退した。
人間関係やチームワークが働き続けたい文化として評価される一方で、自身の成長や挑戦を条件に挙げる声は年々小さくなっている様子がうかがえる。成長そのものを望まなくなったというより、まず安心して居られる環境があってこそ、その先の成長を考えられるという変化なのかもしれない。
実際、会社に期待するキャリア支援としては「上司に相談できる機会をつくってほしい」が56.5%でトップとなり、「上司以外の社員に相談できる機会をつくってほしい」(33.0%)とともに上昇傾向が続いている。

同じ会社で働き続けたいという新入社員が過去最高を更新したという事実は、企業にとって歓迎すべき数字に見える。だが、その内実は成長への意欲ではなく安心への希求によって支えられているようだ。安心感と成長実感を両立させる仕組みを、企業の側がどう描けるかが今後、問われていくのかもしれない。
【調査概要】
調査対象:2026年度入社の新入社員3849人
調査期間:2026年3月24日〜5月6日
調査方法:Web・マークシート記入式、または自記式でのアンケート調査
プレスリリース


