マーケティング

2026.06.21 14:15

AIが代行する世界で、マーケティングはようやく顧客と対面する?│ Google I/O 2026

もうひとつの声:拡張者としてのAIが顔を見せている

Pichaiが2時間にわたるエージェント時代の宣言を終えた後、ステージに立ったのはGoogle DeepMindのCEO、Demis Hassabisでした。彼が語ったのは科学的発見を加速するAIの方向で、仮説生成、計算探索、生命科学データベースとの接続など、科学研究の中核的なプロセスをAIで押し広げようとする取り組み「Gemini for Science」が発表されました。
 

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ハリケーンの上陸を高い信頼度で予測した気象モデル「WeatherNext」や2億個ものタンパク質構造を予測した「AlphaFold」など、既に実用段階にある事例が紹介され、「We're standing in the foothills of the singularity(私たちはシンギュラリティの麓に立っている)」 という締めの言葉には、これまでにない温度を感じずにはいられませんでした。

ここで登場したAIは、単に研究者の代わりに作業する存在ではありません。人間が何十年もかけて蓄積してきたデータや知見を、AIが別のスケールでつなぎ直し、人間だけでは見つけきれなかった関係を探し、人間だけでは試しきれなかった仮説を広げる。

これは同じ「AIの時代」の話で、Pichaiが示したエージェント時代とも地続きです。ただ、構造は異なる。人間とAIの役割分担ではなく、能力の合算。I/O 2026の会場で、私の中に二つのAIの像が同時に立ち上がっていました。 

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マーケティングへの翻訳

マーケティングの領域で、Hassabisが示した構造に対応するものは何なのか。近しい現象を、実際に自分たちの仕事の中で感じたことがあります。

2025年末にローンチした「ペットカードジェネレーター」というWeb体験で、マヂカルラブリーの野田クリスタルさんと開発したものです。ペットの写真と推しポイント等をユーザーに入力してもらうと、Geminiがトレーディングカード風の画像を生成します。公開初日に130万アクセスを記録し、40万枚以上のカードが生成された、予想以上の反響を生んだ施策でした。
 

 


この企画で勝負していたのは、AIの出力精度ではありません。同種の画像生成施策はすでに無数にあります。AIが生成した「ペット風画像」だけなら、すごいものでも、もうすごいとは思われない。重要だったのは、AIが単独では作れない入力 ── 飼い主一人ひとりが、自分のペットついて「ここが愛おしい!と差し出した固有の言葉」と、「カメラロールの中から厳選した一枚」を、AIの生成能力と結合させたことでした。

飼い主の側にあったのは、そのペットと何年も同じ家で過ごし、体験を共有してきた時間の蓄積です。それはAIが外から推定できるものではありません。一方で、人間の側にないのはその唯一無二の愛情を即座に汲み取ってカード化する速度と造形力です。両者が結合してはじめて、世界に一枚しかない「うちの子」のカードが、一日で何十万枚も生まれ、共有・拡散されました。

科学の領域で、AIが人類の蓄積を拡張するのだとすれば、マーケティングやクリエイティブの領域では、AIは人の記憶、関係、愛着、気分...…いまその場にしかない気分を拡張する。そう捉え直した方が、一生懸命役割分担を考えるよりもずっと面白い仕事ができると私は感じています。 

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文、写真=山西康太(電通)

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