第一の声:代行者としてのAIは完成しつつある
I/O 2026では圧倒される物量のプロダクト群が発表されました。クラウド上で24時間稼働するパーソナルエージェントGemini Spark、横断的な購買ハブとして新たに発表された Universal Cart、そして既存の購買・決済規格である Universal Commerce Protocol(UCP)や Agent Payments Protocol(AP2)のアップデート(=エージェント同士の自律決済を一段進める動き)。
他にもフロンティアモデルのGemini 3.5 Flash、マルチモーダルなGemini Omni、生成ワークフローを変えるFlow……と発表は多岐に渡りましたが、個別の機能を追うときりがありません。ただ発表を通じて宣言していることは明らかでした。
「AIを、ユーザーが問いを投げる相談相手から、ユーザーに代わって調べ・選び・実行する主体へと変えていく」この1-2年のAI市場で語られていた進化の形が、Googleの広大な基盤の上で構築されようとしています。

発表を聞きながら、自分の仕事の前提が揺らいでいる現実をいよいよ実感しました。マーケティングは長い間、生活者の意思決定の旅路に介在することで成立してきた営みと言えます。気づく、比べる、迷う、選ぶ。その各所に広告を置き、メッセージを設計し、接触の動線を組み、商品にたどり着くまでの過程そのものをブランドの一部にしてきた。
生活者の下に集結するエージェントは、その余地を容赦なく削っていきます。印象に残るコピーも、感情を動かすクリエイティブも、ブランドの世界観も、エージェントの判断ロジックの前ではただのデータに過ぎない。ブランドとユーザーの間に、マーケティングの手の届かない層が増えていく、ということです。
そんな未来の手触りを、私は同じ空間で先取りしていました。入国後の移動でWaymoに乗ったときのことです。無人の車が目の前に止まり、勝手にハンドルが動いて走り出した直後の迷いや恐怖は束の間で、1分後には普通に窓の外を眺め、同乗者と仕事の話をしていました。思えばスマートフォンが普及したときも、LLMと最初に話したときも、同じ動きをしました。前提を覆す技術も、意外なほどすぐ日常に溶け込む。
もちろん、調べることや選ぶことを丸ごと手放すには抵抗もあるし、簡単には任せない領域も残るでしょう。それでもおそらく、Waymoに運転を委ねたのと同じ滑らかさで、私たちは少しずつエージェントに委ねていくのだと思います。気がついたときには、ブランドとユーザーの間の景色は変わっている。
運転はAIに任せて、人間は外を眺める。そんな未来を実感していた私ですが、まだAIと人間を役割分担でしか捉えられていなかったことに、I/Oの発表終盤に気づかされます。



