リーダーシップ

2026.06.19 17:50

なぜ人は辞めるのか──離職を防ぐエンゲージメント戦略の本質

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競争力のある報酬、充実した福利厚生、柔軟な働き方の方針を用意していても、多くの組織が自発的な離職に苦戦している。米国労働統計局の2026年3月のデータによれば、その月に発生した離職の総数540万件のうち、半数以上が自己都合退職だった。ここから経営陣は、厳しいが避けて通れない問いに直面する。「これほど整っているように見えるのに、なぜ人は去るのか」。

答えは、組織が「何を提供しているか」よりも、従業員が日々の仕事を「どう体験しているか」にある。報酬や福利厚生は重要だが、上司との関係の弱さ、成長の見通しの乏しさ、承認の欠如を補うことはほとんどできない。この意味で、離職は本当の問題ではない。より大きな何かの症状にすぎないのだ。

「無関与」が根本原因であることが多い

従業員が一夜にして退職を決意することはまずない。にもかかわらず、リーダーが終盤の引き留め施策に主眼を置くと、より重要な初期のサインを見逃しがちである。

O.C. Tannerでは、離職の課題は日々のエンゲージメント体験に起因することが一貫して確認されている。当社の2026年版「Global Culture Report」によると、頻繁に承認を受け、強い人間的なつながりを感じている従業員は、継続して働き続けたい意向が大きく高い。同様の結論は外部研究でも支持されている。Gallupによる従業員エンゲージメント研究では、有意義なフィードバック、承認、上司から大切にされているという実感といった要因が、報酬だけよりも定着に強く影響することが一貫して示されている。とりわけハイパフォーマーにおいてその傾向は強い。言い換えれば、エンゲージメントはパフォーマンスと定着の双方に直接影響する。

ここで多くの組織がつまずく。エンゲージメントは、アンケートで測定し、イベントで支え、年に1度見直す「人事施策」として扱われがちである。これらの方法は断続的であるため、離職が目立つ課題になってしまう。最も効果的な組織は、エンゲージメントを「オペレーティングシステム」として捉え、リーダーのリードの仕方やマネジャーのマネジメントの仕方そのものに組み込むべきだと理解している。

成功するエンゲージメント戦略を支える5つの要因

効果の高いエンゲージメント戦略は、定着に一貫して影響する少数の要因に焦点を当てる。

目的と意義:自分の貢献がもたらす影響を理解している従業員ほど、その職場に残りやすい。したがってリーダーは、個々の仕事をより大きな目標へ継続的につなげなければならない。

成長の見通し:キャリアについての対話と社内異動を当たり前にする。これは、組織が従業員の将来づくりを支援することにコミットしているというシグナルになる。

• マネジャーの有効性:人は組織を辞めるのではなく、上司を辞める。マネジャーがコーチングし、承認し、従業員とつながるためのトレーニングは、このリスクを減らしうる。

承認と感謝:大切にされているという実感は「あれば望ましいもの」ではない。タイムリーで誠実な承認は情緒的なコミットメントを育て、沈黙はそれを損なう。

声と信頼:フィードバックが目に見える行動につながると従業員が理解できたとき、エンゲージメントは強まる。

どの要因が最大の効果をもたらすかを判断するには、エンゲージメントデータを精緻に見る必要がある。例えば当社のクライアントであるDeloitte Indiaのリーダーは、カルチャー調査を実施し、明確なギャップを見いだした。新入社員が一貫して感謝や承認を体験できていなかったのだ。成長と成果は従業員のウェルビーイングを犠牲にして成り立つものではないと理解した同社は、「承認」を職場における重要な要素として扱うことを決めた。私たちが開発したカスタマイズ型の承認プラットフォームを通じ、リーダーの期待事項と日々のワークフローに組み込まれた。リーダーは研修を受け、承認に関する指標はKPIに組み込まれ、CEOレベルから一貫して感謝が強化された。その効果は測定可能だった。1年以内に、従業員の70%超がプラットフォームを積極的に利用し、感謝を伝える場面は数万件規模に拡大、離職率は10ポイント低下した。

これは1社に限らない教訓である。エンゲージメントが断続的ではなく継続的であれば、リーダーは期待する行動を自ら体現し、マネジャーは人をどう導くかで評価され、承認や成長の対話は仕事の流れの一部になる。こうした環境では、離職を過度に「管理」する必要はない。エンゲージメントが強まるにつれて、離職は自然に減っていく。

定着は結果であり、戦略ではない

CEOや経営陣にとってメッセージは明確だ。離職率が高い状況で問うべきは「どう人材を引き留めるか」ではない。「日々のリーダーシップの振る舞いの中に、エンゲージメントが確実に表れる状態をどうつくるか」である。

組織が人材を失うのは、突然ではない。退職届が出されるずっと前から、少しずつ失っていくのだ。

forbes.com 原文

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