日本人としての行間を一定量経験している筆者は高市首相が「FOIP発足から10年経ちもう古くなった」というような主張をしたかったとは思えない。むしろ、「(現状でも十分貢献していると信じている)FOIPを、更にASEANに貢献できるようますます強化していきたい」というようなことを発信したかったと思う。そしてスピーチ全体を聞けば、このような首相の意図はASEANのリーダー達には十分に伝わったと感じている。
このような例をあえて紹介したことには、実は理由がある。ビジネス英語の指導をしている筆者の立場から「英語の論理展開や特徴、さらには行間の取り扱いの違いを学ぶことは避けられない」ことを伝えたかったからだ。加えて、英語の論理展開の特徴に盲目的でいると、国際コミュニケーションの遅延やすれ違いの本質的な原因追及から遠ざかってしまうことを共有するためだ。すなわち、日本語には「空気を読みながら言語を使う」というルールがあるように、英語には英語の言語の使い方のルールが存在しているのだ。
せっかく英語力を向上させ、国際コミュニケーションにチャレンジしているにも関わらず、英語におけるコミュニケーションの特徴を無視するのは、的を得た言語学習の取り組みにはならない。
筆者も、指導の現場では「背景」から「結論」に至るまでの論理展開に加え、後ろから説明を加えていくという特徴を伝え、英語を使ったコミュニケーションの円滑化にコンテクスチュアル・ランゲージの視点から取り組んでいる。
国際コミュニケーションの円滑化に課題を感じているのであれば、ぜひ英語力に加え「行間」や「論理展開」にも目を向け、改善への足がかりを手に入れていただきたい。
まとめ
高市首相がその姿を示したように、「自分は英語はダメだから」と尻込みするのではなく、たとえ原稿を読む形であっても、英語でのコミュニケーションに挑戦する姿勢は大きな意味を持つ。政治の場においても、それは日本に対しても海外に対しても、デメリット以上にメリットがあることは、すでに多くの議論が同意するところだろう。
加えて、一定以上の英語力があるのであれば、さらなる円滑なコミュニケーションを目指し、単語の選択や行間、そして英語の論理構成への理解を深めて欲しい。真に差を生むのは、英語の「行間」や「論理構成」を理解し、それを調整できるかどうかであるからだ。その違いを知り、調整する力こそが、国際舞台で信頼を築き、より良い関係、協力、提携、そして取引へとつながっていくのである。
また、冒頭で紹介した「日本人がすぐにでも改められる英語発音」について留意し、「多数派の英語発音」を習得することも、ビジネスパーソンの英語習得術のひとつではないかと思う。
松樹悠太朗(まつき・ゆうたろう)◎1978年香港生まれ。YouWorld代表取締役。国際交渉における日本語と英語の行間や文化的作法の違いを調整し、意思疎通のニュアンスを最適化する「コンテクスチュアル・ランゲージ戦略」の専門家。英文Eメール、プレゼン資料、交渉の軌道修正などで成果を上げており、クライアントにはスタートアップCEO、金融機関役員、日系商社支社長、製薬企業代表、日本刃物ブランドなどがいる。


