論理を整える──<主張>中心の構造
最後の点になるがこれは行間に加え、英語特有の論理構成に基づいた説明となる。
まず英語の論理展開は「主張」と「本論」で形成される。「主張」は言いたいことであり、「本論」は主張を支える理由・説明・証拠となる。加えて、英語の論理展開には「主張」と「本論」に加え、「背景」「議論・内観・反論(Discussion・counterargument・rebuttal)」そして「結論」を足すことができる。しかしこれらのパーツがそれぞれ別の働きを持っているわけではなく、全ては「主張」をより明確にする為に機能することを強調しておきたい。
すなわち、「背景」「議論・内観・反論」「本論」は「主張」をより明確にする為に存在し、さらに「結論」は「主張」の繰り返し、または言い換えとなる。すなわち「主張」と同じ内容が「結論」でも展開される。
上記は英語の論理展開の説明となるが、英語の文章校正にはもう一つ日本語とは異なる特徴がある。それは後ろから説明を加えていく構成が英語の表現文化となるということだ。
高市首相の過去の英語のスピーチの以下の部分に注目してみよう。「後ろから説明を加えていく構成」ではなく、日本語の論理展開の特徴を反映した英語となっている例だ。
以下取り上げたスピーチ内容は「背景」と「主張」という論理展開の部分となる。以下、少し解説してみよう。
Next year marks the 10th anniversary since Prime Minister Abe launched FOIP in 2016. We will use this opportunity to reposition FOIP as a pillar of Japanese diplomacy and evolve it in line with changes in the times.
(直訳)来年は安倍首相が2016年にFOIPを開始してから10周年を迎える。これを機会とし(これを機に)、FOIPを日本外交の柱として位置付け直し、時代の変化に合わせて進化させていく。
英語で展開されたこのスピーチを英語の論理展開に沿って見ていくと、「来年(2026年)は安倍首相が2016年にFOIPを開始してから10周年を迎える」の部分は「背景」となり、「FOIPを日本外交の柱として位置付けを改め、時代の変化に合わせて進化させていく」の部分が「主張」となる。
先ほども述べたように「背景」も「主張」をより明確にする為のパーツとなる。なので、簡単に言えば、次のような論理展開が存在している。〇〇のような「背景」の中で(の中だから)、〇〇という「主張」となる、ということだ。このような論理展開を英語の表現文化に反映させると、先ほどの英語のスピーチは直観的に次のように言っているように聞き手は感じる。
10年経ったから、FOIPの位置付けを改め、時代の変化に合わせて進化させる。
少々極端に感じるかもしれないが、英語の一般的な論理展開においてはこのように感じるのだ。また補足になるが、この10年経過した今をthis opportunityで受けているので更にそのように感じさせる。さらに直観的にこのように言っていると感じる為、どうしても次のような行間が無意識の内に生まれてしまう。
10年経ち<時代にそぐわなくなってきた><だから>これを機に、FOIPの位置付けを改め、時代の変化に合わせて進化させる。
こう読み取ってみると、とどのつまり、「現在のFOIPは変える必要がある」という行間があたかも存在しているように取れてしまうのだ。


