女性にとって、仕事ができるだけでは十分ではない。能力があると見なされるには、ジェンダーの固定観念に沿う振る舞いも求められる。学術研究によれば、今なお職場では、権力が支配的・自己主張が強い・攻撃的といった「男性的」な振る舞いと結びつけられやすいため、女性は反発を受けやすい。成果を出すにはそうした振る舞いも必要になる一方、受け入れられ好かれるためには、おとなしい、控えめ、目立たない、共感的で温かいといった、より「女性的」とされる振る舞いでジェンダーの固定観念に合わせる必要がある。これができないと、能力はあるが好かれない、と受け取られやすい。
「女性は自己主張と温かさの綱渡りをしなければならず、対立の場面ではとりわけ顕著だ。男性も多少は同じことを感じるかもしれないが、研究によると、対立への対処について男性にはより大目に見られる傾向がある。男性が対立を避ければ、『避けるのには理由があるのだろう。戦略的なのかもしれない』と考えられる。攻撃的であれば、『それが彼の役割だ』と受け取られる」
そう語るのは、職場の対立を専門とし、『Getting Along: How to Work with Anyone (Even Difficult People)』の著者でもあるエイミー・ガロだ。
職場で対立を避けることはできない。健全な意見の相違は協働につきものであり、個人とチームのパフォーマンスを高めることも多い。女性が成果を出すには、同僚の主張や前提に異議を唱え、別の視点を提示し、反対し、意思決定の根拠を問う必要がある。その際に、自動的に「扱いにくい人」や「好感が持てない人」と見なされないことが重要だ。
ここではガロが、対立の場面におけるジェンダーバイアスに対処し、女性が安心して意見を異にできる環境をつくる3つの方法を共有する。
健全な対立をジェンダーバイアスで台無しにしない
女性が対立に向き合いやすくするために、誰もが役割を担える。ガロによれば、その出発点は、職場でジェンダーバイアスを目撃したり自分が経験したりしたときに、それを指摘することだ。
「会議で男性が『感情的になる必要はないよ』と言ったとする。そうしたら誰かが、『意図はなかったのかもしれないが、その発言にはジェンダーバイアスが含まれていると思う。女性が表す感情は、男性の場合よりも"感情的"だと受け取られがちだから』と言える」
バイアスを中立的かつ落ち着いた態度で指摘すること自体が、効果的な対立への関与の一例であり、ガロはそれが関係性の強化につながると考えている。
「あなたと私が議論になり、緊張が生まれるとする。すると私は『しまった、彼女はもう私を尊重してくれないかもしれない。これまでうまくやってきたのに、関係を壊したくない』と考え始める。そして事態を丸く収めようとするが、そこには少し不誠実さが入り込む。言うつもりのないことを言ったり、フィードバックを控えたりするからだ。意見を言い合える相手は、強い関係性を築けている相手であることが多い。関係性を信頼しているからだ」
女性は、とりわけ対立に関してジェンダーバイアスを内面化し、対立をそもそも避けたり、丸く収めようとしたりする必要を感じがちだとガロは言う。自分がそうしていることに気づいたときは、求めていることを明確に伝えたり、自分の見解を共有したりして、踏みとどまることが重要だ。
対立を「脅威」ではなく「スキル」として捉え直す
対立を避けたほうが楽に見えるかもしれない。しかし長い目で見れば、それは協働、問題解決、イノベーションを効果的に進める力を制限する。対立がすべて悪いわけではない。
「対立が良いものかどうかを判断するために、私はこう自問する。『この会話は、より良い意思決定に向かう助けになっているか。目標やターゲットの達成に近づいているか。そして関係性の改善に役立っているか。生産的か』と」
多くの人が対立を避けるのは、その有効性を「その瞬間にどれだけ心地よいか」で評価してしまうからだとガロは考える。これは誤りで、生産的な対立であっても、多くの場合は居心地が悪い。
「より良いアイデアや成果物、意思決定にたどり着くためには、不快さが伴う必要がある。しかしそれは、悪い対立だという意味ではない。不健全な対立とは、皮肉なコメントをしたり、受け身の攻撃的なメールを送ったり、互いの感情的反応に反応し合ったりして、仕事の根底にあるアイデアや目的についての議論や意見の相違にきちんと向き合わないことだ」
すべての従業員が「良い対立」に慣れるためには、リーダーが意見の相違を当たり前のものとして位置づけ、適切な振る舞いを手本として示し、良い対立に関与したメンバーを評価する必要がある。
観察し、学び、自分のものにする
対立を効果的に扱うことは、誰でも学べるスキルだ。ガロによれば、そのスキルを伸ばす最良の方法は、すでに対立をうまく扱えている人を観察することにある。これは、二重拘束を乗り越えるために別の戦略が必要な女性にとって、特に重要だ。
「まったく同じやり方にはならない。なぜなら、あなたは別の人間だからだ。だが、相手が何をしているか、何と言っているか、どんなボディランゲージかを見てほしい。そしてその瞬間が来たら、相手の振る舞いを取り入れてみる。あなたらしさは保たれるはずだが、観察から得たスキルを少しでも持ち込めるだろう」
女性が健全な対立に関わる機会が増えるほど、対立への耐性が培われ、他の女性が使える効果的な戦略のロールモデルにもなっていく。



