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サイエンス

2026.06.24 18:00

数十km先のにおいを感知するホッキョクグマの驚異的な嗅覚と狩りの戦略

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氷と水の世界でどうやって生き抜くのか

北極は、そこに生息するあらゆる者にとって容赦ない環境だ。食物は乏しい。獲物は、身を隠すのに長けている。そして、狩りを成功させる機会が、広大な距離によって隔てられることは頻繁に起こる。そうした条件下で自然選択に優遇されるのは、周囲環境に関する信頼性の高い情報を集められる動物だ。

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2015年に『Journal of Zoology』で発表された研究で、研究チームがホッキョクグマの化学的なコミュニケーションを調べたところ、個体同士の交流の仕方において、においが中心的な役割を担っているエビデンスが見つかった。社会性のある多くの肉食動物とは異なり、ホッキョクグマは、生活の大部分を単独で過ごす。各個体が広大な行動圏を歩きまわり、そのあいだずっと、同種の仲間と遭遇することはめったにない。

そのような状況で、においは、環境中にメッセージを残す効果的な方法になる。ホッキョクグマの足裏から分泌される化学シグナルは、その個体が何者か、どのような生殖状態にあるか、別の個体が最近いたか、といった情報を伝えてくる。

私たちからすれば、北極には氷と水しかないように見える。だが、ホッキョクグマにとって北極の風景は、物理的なものであるのと同じくらい、化学的なものでもある。ほかのホッキョクグマが残した、自分たち以外にはほぼ誰にも感知できない手がかりに満ちているのだ。

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においに強く依存するそうしたコミュニケーションは、ホッキョクグマの嗅覚が、長い進化のなかで高度に発達してきた理由を説明している。かすかなにおいを嗅ぎとる能力を持つホッキョクグマが得られる利益は、狩りだけにとうていとどまらない。例えば、以下のような利点がある:

・交尾相手の候補を見つける
・競争相手を値踏みする
・不要な衝突を避ける
・ほかの個体に直接遭遇せずに、環境に関する情報を集める

進化の観点から見れば、においを嗅ぎとる能力が向上すれば、それがどれだけ小さな向上であっても、種の生存と生殖の成功率は高くなるだろう。

このメリットをさらに強化しているのが、嗅覚系の二重の役割、つまり、コミュニケーションを可能にする仕組みが採餌の助けにもなることだ。進化は、まったく新しいシステムを発明するよりも、既存のシステムの改変を好む傾向がある。かすかな化学シグナルから詳細な情報を引き出せる嗅覚系は、そのシグナルの出どころが別のホッキョクグマであれ、隠れたアザラシであれ、役に立つだろう。

その結果として生まれたのが、情報が、視覚や聴覚ではなく、嗅覚で運ばれることの多い世界にみごとに適応した捕食者なのだ。

次ページ > 北極の変化に、ホッキョクグマは追いつけない

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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