AI向けデータセンターの建設ラッシュが送電網に負荷をかけ、電気工事士、送電線作業員、その他の熟練インフラ人材への需要を押し上げている。
人工知能(AI)をめぐる議論の多くは、半導体、データセンター、発電所、そして電力需要に集中している。いずれも重要な論点であることは間違いない。だが、もう1つのボトルネックが浮上しつつあり、これは見過ごされてきた重大な課題になりかねない。
AIブームには、電気工事士が足りないのだ。
足りないのは電気工事士だけではない。送電線作業員、変電所技術者、送電網エンジニア、機械工事業者、溶接工、建設作業員、そして試運転(コミッショニング)の専門家も揃って不足している。これらは、ソフトウェアのアップデートや新規の資金調達で一夜にして埋まる類の職種ではない。訓練と経験、そして安定した人材供給の流れがあって初めて成り立つ職種だが、現在の電力業界には、そのいずれもが心もとない。
ここで思い出しておくべきは、AIブームが単にデジタル分野で起きている現象ではないという点だ。それは同時に、極めて物理的なインフラの物語でもある。
半導体から建設工事へ
AIインフラ整備の第1段階は、計算能力の獲得競争一色だった。投資家の関心は、半導体メーカー、クラウド事業者、そしてAIの処理負荷を支える大規模データセンターを建設する企業に集中してきた。
しかし、こうした施設はすべて送電網につながなければ動かない。変圧器、変電所、バックアップ発電設備、冷却システム、送電網へのアクセスが必要であり、それらを建設・保守できる有資格の作業員も欠かせない。
問題が一段とややこしくなるのは、まさにここである。ロイターの最近の報道によれば、データセンター建設の急増を受け、電気工事士や送電線作業員をはじめ、エンジニアリング・調達・施工(EPC)の各分野で、電力・送電網関連の人材不足が深刻化している。問題は単に需要が増えていることだけではない。経験豊富な建設作業員の相当数が退職年齢に差し掛かるなかで、需要が膨らんでいるという点こそが核心だ。
これは、多くの投資家がこれまで想定してきたタイプの制約とは性質が違う。電力会社は資本を調達できる。ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は電力購入契約(PPA)を結べる。デベロッパーは機材を発注できる。それでも、訓練を受けた作業員が確保できなければ、プロジェクトはやはり遅れる。



