必要とされる規模
ゴールドマン・サックス・リサーチの推計によれば、米国のデータセンター向け電力需要は、2025年の31ギガワットから2026年には41ギガワット、2027年には66ギガワットへと拡大する見通しだ。2025年末から2027年末までの2年間で、データセンターの容量は2倍超に膨らむ計算だ。
この需要に応えるには、発電、送電、系統連系、バックアップ設備の大規模な整備が欠かせない。ゴールドマンはまた、米国の電力部門が需要拡大に対応するには2030年までに約51万人の追加労働力を要し、欧州ではさらに25万人が必要になると試算している。
これらの数字は、なぜ労働力問題が制約要因となり得るのかを物語っている。電力業界は、業界内だけで人材を奪い合っているわけではないのだ。データセンター、電力会社、再生可能エネルギー開発業者、メーカー、産業プロジェクト、そして送電網近代化プログラムのすべてが、同じ熟練労働者を取り合っているのである。
米労働統計局(Bureau of Labor Statistics、BLS)は、電気工事士の雇用が2024年から2034年にかけて9%伸びると予測している。これは全職種平均を大きく上回るペースだ。同局はまた、年間約8万1000件の電気工事士の求人が発生し、その多くは離職や退職に伴う補充だと見ている。
電線敷設工・修理工については、同じ期間に7%の雇用増加が見込まれており、これも平均を大きく上回る。求人数は年間約1万700件である。
いずれも待遇の良い仕事だ。しかし、有資格の電気工事士や送電線作業員を1人前に育てるには時間がかかる。しかも、最も経験豊富な作業員ほど、最も難度の高いプロジェクトに引っ張られる傾向がある。
コスト、遅延、そして電気料金
熟練労働力が不足しても、AIインフラ建設が止まるわけではない。ただ、コストはかさみ、進捗にばらつきが出る。
スポンサーの後ろ盾が厚く、立地に恵まれ、電力会社との連携が明確なプロジェクトは、前進する公算が大きい。それ以外のプロジェクトは、工期の遅れ、予算の超過、あるいは系統連系までの長期化に直面する恐れがある。同じ圧力は、送電網のアップグレード、再生可能エネルギー事業、天然ガス発電所、送電網強靱化工事にも及びかねない。
これはエネルギー政策、電力消費者、そして投資家のいずれにも直接響いてくる。
大規模データセンターに電力を供給するために電力会社がインフラ増設を迫られるのなら、その費用は誰かが負担しなければならない。規制当局は、その費用を需要の担い手である大口顧客に主に負担させるべきか、それとも料金算定基盤(レートベース)を通じて広く分散させるべきかをめぐり、すでに頭を悩ませている。労働力不足は、この議論にもう一段の難しさを加える。建設コストの上昇は、最終的にプロジェクトの採算に跳ね返ってくるからだ。
データセンターブームが単なるテクノロジー分野の話題にとどまらなくなってきた理由の1つが、ここにある。問題はもはや、公益事業規制、建設労働、電力市場、地域経済開発の領域にまで広がりつつあるのだ。


