さらに、ロシアやイランの影響力から逃れた地域が繁栄すれば、ジョージアやチェチェンといった、これまで堅固にプーチン大統領支持を貫いてきた地域にも圧力がかかることになるだろう。ジョージアはこれまで、事実上の支配者であるビジナ・イワニシビリ元首相がロシアからの資金を投じて同国との緊密な関係を維持してきたため、ウクライナ侵攻によって生じた緊張から逃れてきた。しかし、ロシアからの資金は枯渇しつつある。ロシア国内に位置するチェチェン共和国に関しては、ロシア空軍が同共和国の首都グロズヌイを破壊し、親ロシア政権を樹立することで、2度にわたるチェチェン紛争に終止符を打った。だが、ウクライナ侵攻によってロシアの軍事資源は著しく消耗しており、将来チェチェンを不安定化させる事態が生じたとしても、ロシア軍がそれを制御することはほぼ不可能だろう。
当然、この反ロシア的なシナリオには複数の問題点がある。まず、パシニャン首相は、アルメニアとアゼルバイジャンの間で係争中の領土の返還を義務付ける規定など、両国の緊張緩和の妨げとなっている現行の憲法上の規定を変更するために、圧倒的多数の支持を得る必要があった。同首相がその方向に向けて具体的な一歩を踏み出すたびに、ロシアが支援するプロパガンダによって、国と安全保障を売り渡しているという非難がつきまとうだろう。クレムリンは既に、パシニャン首相が実際には選挙に敗北したという主張をアルメニアのインターネット上で拡散している。
世界もこうした情報操作に完全に影響されないわけではない。4月のブルガリア総選挙でロシア寄りのポピュリストが勝利したことがその証拠だ。ブルガリアの新指導者に選ばれたルメン・ラデフ首相は、直ちにウクライナへの軍事支援を停止した。さらに、イスラエルはアゼルバイジャンを全面的に支持しているものの、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領の反イスラエル政策に強い不満を抱いており、妨害要因となる可能性もある。
だが、今や周辺地域にとって数兆ドル規模の経済が懸かっている状況で、パシニャン首相は地域からの強力な支持を得ている。その成否の大部分は、トランプ大統領が約束を実行に移すかどうかに懸かっている。


