欧州

2026.06.19 11:00

新欧米派の首相が勝利したアルメニア総選挙、ロシア離れが鮮明に

米首都ワシントンのホワイトハウスで会談した同国のドナルド・トランプ大統領(左)とアルメニアのニコル・パシニャン首相。2025年8月8日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

ここで、選挙結果がもたらす2つ目の大きな地政学的意味合いについて触れておこう。

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アルメニアは(友好関係は維持しつつも)ロシアから距離を置いているだけでなく、宿敵だった隣国のアゼルバイジャンやトルコとの緊張緩和へと向かっている。これは、アルメニアが2023年のナゴルノカラバフ紛争でトルコの支援を受けたアゼルバイジャンに敗北し、10万人のアルメニア人が避難を余儀なくされたことを考えれば、極めて異例な姿勢だと言えよう。だが、ロシアはこの紛争でアルメニアを防衛できず、同国の国民の離反を招いたのだ。前述のトランプ大統領の発言が示唆するように、この勢力再編はカフカス地方にとどまらず、中央アジア全域にわたる変化を予感させる。

これまでロシア経由の貿易に頼らざるを得なかったアルメニアのような内陸国は、アゼルバイジャンとトルコを経由する新たな世界への出口を手に入れた。かつて、ロシアを迂回(うかい)する選択肢は中国とイランだけだった。トランプ大統領はアルメニアとアゼルバイジャンの和平条約の締結を主導し、いわゆる「国際平和と繁栄に向けたトランプ回廊」を創設することで、この新たな貿易ルートの形成を加速させた。つまり、ロシアに代わってアルメニアの安全を保証したのだ。

では、なぜトランプ大統領はロシアの事実上の旧植民地であるアルメニアの解放を支援したのだろうか? 答えはイランの存在だ。

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中央アジアの貿易ルートを地理的に封じ込め、通過料で利益を得ていたのはロシアとイランだった。ところが今、アルメニアはアゼルバイジャンやトルコと連携して新回廊を構築し、新たな貿易の選択肢を得た。カザフスタンは既にこのルートを利用してトラックで石油を出荷しており、間もなくパイプラインも敷設されるだろう。ロシアが禁輸措置を通じてアルメニアに科す制裁も、もはや実効性を失っている。

では、話をイランに戻そう。そしてカフカス地方全体について考えてみよう。同地域が欧米の投資を受け入れるようになれば、イランの領土保全が脅かされることになる。イラン国内のアゼルバイジャン系住民が大多数を占める州が、国境を越えたアゼルバイジャン本土で同胞が繁栄する様子を目の当たりにすれば、分離独立への動きは強まるだろう。この可能性は、イランの南進への関心をそらすことになる。イスラエルがここ数年アゼルバイジャンを支援してきたのは、まさにこの脅威を生み出すためだ。実際、アルメニアとトルコを経由するカザフスタン産とアゼルバイジャン産の石油の輸送経路はホルムズ海峡に代わる選択肢となり、イランが持つ最大の地政学的切り札を無力化することになる。

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翻訳・編集=安藤清香

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