ニューヨークはバスケットボールの街である。
まず、マンハッタンのハーレムには、聖地ラッカー・パークが位置している(280 W 155th St,)。155丁目とフレデリック・ダグラス・ブルバードが交わる地点に位置するこの聖地は、もともと非行防止と進学支援のため、1950年にホルコム・ラッカー氏が大会を開催した事実に端を発する。全米バスケットボール協会(NBA)入り以前にこの聖地を沸かせたレジェンドは枚挙にいとまがない。
1試合最多の100得点を記録したウィルト・チェンバレンをはじめ、2023年にレブロン・ジェームズに更新されるまで、39年にわたりNBA通算最多得点記録を保持していたカリーム・アブドゥル・ジャバー、マイケル・ジョーダン以前「ダンク」を定着させたDr.Jことジュリアス・アービング、クイーンズ出身のケニー・アンダーソン、コニー・アイランド出身のステフォン・マーブリーなど地元出身プレーヤーも伝説を作った。カイリー・アービング主演、シャキール・オニール、レジー・ミラーなどのレジェンド選手も出演した2018年公開映画『アンクル・ドリュー』の舞台となったのも、まさにこの聖地だ。
日本人にも馴染み深いダウンタウンにも「The Cage」と呼ばれる聖地がある。地下鉄の「West 4th Street–Washington Square」駅の真上に位置しているため観光で訪れた際に目にした方も多いだろう。正式名称は、West 4th Street Courts。こちらでは、さきほどのアービング、ジャバー、マーブリーらに加えアンソニー・メイソン、カーメロ・アンソニーなど地元ニューヨーク・ニックスで活躍した選手の姿もみられた。
ニューヨークにおいてバスケットボール・コートはチャイナタウンも含め多数存在するが、この2カ所は別格だろう。
ニックスのホームコートであり、スポーツとエンターテインメントの聖地マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)が34丁目、大ターミナル・ペンシルベニア駅(通称ペン・ステーション)の真上に鎮座している。ニックスの人気はすさまじく2010年から15年にかけ「201試合連続満員御礼」という記録を樹立。これには、チームが球団史上最悪の17勝65敗に終わった2014-15年シーズンも含まれるから、驚きだ。今でこそインターネットで入手可能だが、1990年代には私自身、MSGにて8時間も並んで、なんとかチケットを手にしていた。
だが、こうした背景がありながら、同じくアメリカを代表する都市ロサンゼルスを本拠地とするレイカースは、ミネアポリス時代も含め17回NBAを制覇。一方ニックスは1946年創設で、NBAきっての老舗チームでありながら、過去に1970年と1973年という2度の優勝のみと、大きく水をあけられている。創設から一度もフランチャイズを変更していないチームは、ボストン・セルティックスとニックスのみ。セルティクスもまた11連覇を含む18回の優勝を誇る。
これだけでも13日(日本時間14日)、ニックスがNBAファイナル第5戦においてサンアントニオ・スパーズを94対90で下し、実に53年ぶりの優勝を果たしたこの街の熱狂ぶりが想像できるだろう。



