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2026.06.20 14:15

ニューヨーク・ニックス「53年ぶりNBA優勝」を経営視点で読み解く、組織復活の奇跡

53年ぶりのニックス優勝に沸くニューヨークの街(Getty Images)

シボドーはハードワークを信条とし、崩壊していたチームの規律を立て直す「創業期・再生期」のリーダーとしては最適だった。しかし、チームを優勝という「成熟期・頂点」へ導くためには、より柔軟で異なるコミュニケーションスタイルを持つリーダーが必要であるとローズは判断したのだ。 

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53年ぶりの栄冠を手にした今だから、これが成功だったと振り返ることができるが、このニュースを耳にした昨年、私は「ニックスがまた愚行を犯した」とさえ思ったものだ。 

成功に近い既存の体制を解体することは大きなリスクを伴う。だが現状維持の罠に陥らず、非情とも言える決断を下した経営トップの眼力は、今となっては賞賛に値するだろう。また同時に、将来のドラフト1巡目指名権を5つも放出してミカル・ブリッジズを獲得するという、未来の資産を担保にして現在の勝負に出た投資も、明確なビジョンに基づく判断だった。これには大きな批判もあった。優勝後、ブリッジズ自身も「ドラフトは忘れろ」とコメントしたように、大きな波風を乗り越えた労苦がうかがえた。 

29点差をひっくり返したアンダードッグ 

現代のマネジメントにおいて最も重視される要素のひとつが「心理的安全性」だろう。2026年のニックスはまさにその体現者だ。

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NBAで2番目に高い総年俸を誇るビッグマーケットのチームでありながら、ニックスの戦いぶりは常に「アンダードッグ(挑戦者)」のそれだった。スパーズのビクター・ウェンバンヤマ、レイカーズのドンチッチやデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチらのような圧倒的なスーパースター不在の中でも頂点に立てた理由は、強固な相互信頼とチーム文化にあろう。 

ブランソン、ジョシュ・ハート、ブリッジズというヴィラノーヴァ(Villanova)大学出身のトリオが形成した深い絆は、チーム全体に波及した(「ビラノバ」という表記が日本のメディアでは一般的だが、私にとってどこの大学だが、わからない違和感があるので、こう表記させてほしい)。

ファイナル第4戦の決定機においてハートがレイアップを外した際、ハートを責める者は誰一人としておらず、ブランソンやカール=アンソニー・タウンズ、ホセ・アルバラードがいち早く駆け寄ってハートを鼓舞した。ハート自身が「最も困難な状況下で共に立ち向かえる団結力こそが、チャンピオンの習慣を生み出す」と語った通り、失敗を恐れずに挑戦できる環境、互いのミスをカバーし合う精神が、分析の予測を覆す勝利を幾度となく呼び込んだ。誰もがエゴを捨て、泥臭いプレースタイルを貫く組織は、強大な敵であるウェンバンヤマ率いるスパーズをも凌駕する力を持っていた。 

また、主力選手だけでなく、一度はリーグから見放されたランドリー・シャメットのようなロールプレイヤーが極めて重要な局面で見せた活躍も、組織全体に役割が浸透し、全員が自身の価値を認識し機能していた証左。そして第4戦、NBA史上最大となった29点差からの大逆転が、その象徴だ。 

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文=松永裕司

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