社会課題が複雑化するなか、物事の本質を見極め、正解のない問いに挑む人の必要性は高まるばかりだ。ソーシャルビジネススクール「ボーダレスアカデミー」や、早稲田大学をはじめとする高等教育機関との連携を通じて次世代リーダーの育成に取り組んではいるものの、「ダイナミックに動けるプレイヤーが圧倒的に不足している」と田口は言う。
プレイヤーを増やすためには、主にふたつの課題をクリアする必要がある。ひとつは、社会課題の解決に興味を抱く人の母数を増やすことだ。そのカギとなるのが、田口が提唱する「性弱説」である。
「人は生まれながらにして、すごくいいものをもっている。でも同時に、人間は弱い生き物で、環境によってどの部分が引き出されるかが変わってくる。誰かのため、社会のためにという『GOOD WILL』には発動条件があるのではないかというのが僕の仮説です」
実は田口も、大学生になったばかりのころは「やる気がない族」のひとりだったという。やりたいことがない。バイトの面接も通らない。お金がないので遊びにも行けない。「無」の時間が続くなか、「俺は何がやりたいのだろう」と強烈に考えていた。そんななか、アフリカで貧困にあえぐ少年のドキュメンタリー番組を観た瞬間、田口のグッドウィルが「発芽」したという。
「敵に不足なし。貧困に代表される社会問題の解決に挑むことは、自分の人生を懸けるに値すると思った」
人間は性善でありつつも、環境によって左右される「弱い存在」である。この前提に立てば、「どんな組織や環境なら、人のグッドウィルを発芽させられるのか」という前向きな問いを立てることができる。そして、試行錯誤を通じてこの問いに向き合うことこそがプレイヤーの数を増やし、社会課題の解決を前進させる一歩となる。
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田口一成◎ソーシャルビジネスのパイオニア。1980年、福岡市生まれ。早稲田大学在学中に米国ワシントン大学へビジネス留学し、卒業後はミスミ(現・ミスミグループ本社)に入社。25歳でボーダレス・ジャパンを創業。2024年にNPO法人ボーダレスファウンデーションを設立。
ボーダレス・ジャパン◎社会課題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」を手がける会社として2007年に設立。「社会の課題をみんなの希望へ変えていく」というパーパスのもと、貧困・環境・教育・ジェンダーなど、国内外のさまざまな社会問題の解決に取り組む。社会課題解決事業を生み出し続ける独自のエコシステムをもち、26年時点で、世界15カ国で45の事業を展開中。グループ全体の売り上げは105億円におよぶ(25年度実績)。


