ソーシャルコンセプトが明確になったら、次に「どういうビジネスで解決していくのか」を考える。ビジネスのコンセプトと事業計画を立案し、ボーダレスの各事業の代表者たちが集まる「社長会」で8割以上の承認を得ることができると、晴れて新規事業の立ち上げとなる。
「ソーシャルコンセプトをつくってから、ビジネスコンセプトに落とし込む。だから、ビジネスがうまくいけば当然、ソーシャルチェンジが起きる」
とはいえ、ゼロイチを達成するのは簡単ではない。新規事業の立ち上げにはお金も時間もかかる。課題にぶつかることも数えきれないほどある。さまざまなハードルを乗り越えるために、ボーダレスには互いに支え合い、高め合い、ソーシャルインパクトを最大化するための仕掛けがいくつも用意されている。
最たる例が「恩送り」と呼ばれる資金循環システムだ。ボーダレスから生まれた事業会社が集まるボーダレス・グループには、黒字の事業部門が税引後利益の10%を拠出するというルールがある。拠出金は、新規事業の立ち上げ資金に充てられる。この仕組みによって、外部の投資家などに依存せずとも事業をスタートできる。
「ソーシャルビジネスは、優秀かつ意識の高い人にしかできないものではない」。このことを証明しようと、田口は自らプレイヤーとして新規事業を立ち上げ、ソーシャルビジネスのプラットフォームをゼロから築き上げてきた。その独自性と存在感に、今や産官学の垣根を越えて、さまざまなアクターが熱視線を送る。
25年9月には国際協力機構(JICA)と連携協定を締結し、国際協力とソーシャルビジネスをかけ合わせた枠組みの構築に取り組み始めた。26年1月には経済産業省が米シリコンバレーに設置したスタートアップ支援拠点「Japan Innovation Campus」(JIC)のコワーキングメンバーに採択された。
そして今、ボーダレスは「ソーシャルビジネスしかやらない会社」という冠を手放し、「二刀流」で社会課題に挑み始めた。
ビジネスとNPOの「二刀流」で挑む
24年12月、田口はNPO法人ボーダレスファウンデーションを設立した。「社会を変えたい想いをしくみに変える」をパーパスに掲げ、自ら課題を調査し、プロジェクトを設計し、社会実装までを一貫して担う「オペレーティング・ファウンデーション」だ。活動資金は、寄付のほか、ボーダレス・グループ各社が恩送りと同じく利益の10%を寄付することで支えられている。
しかしなぜ今、NPOを立ち上げたのか。その理由を田口はこう説明する。
「僕らが目指しているのはより良い社会づくりです。ビジネスリーグと非営利リーグ、両方の手段をもってこそフラットに社会づくりに挑むことができる」
ここでソーシャルビジネスの出番だ。雇用などを通じて人々の暮らしを支え、人と社会のより良い環境づくりに貢献する。基盤を整えることができてはじめて、ソーシャルビジネスが意味をなす。
「ボーダレスファウンデーションの『ファウンデーション』とは、財団ではなく、ソーシャルビジネスにつなげるための基盤という意味なのです」
社会課題に挑むための手段は増えた。だが、圧倒的に足りないものがある。社会課題の解決に本気で向き合い、自ら行動するプレイヤーの数だ。


