ガスタービンが再評価された理由
その象徴がガスタービン技術だ。三菱重工はこの分野の技術を長年にわたり蓄積してきたが、従来は十分な評価を受けていなかった。しかし再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、電力供給を安定させる「安定電源」の重要性が再認識され、ガスタービン需要が拡大した。
つまり、過去に蓄積された技術が、新しい社会インフラの中核として機能し始めたのである。
ここで注目すべきは、三菱重工が短期的な採算性だけで事業を判断しなかった点だ。ガスタービンや防衛事業は長年、収益性の低い分野と見なされていた。しかし同社は撤退せず、人材と技術を維持し続けた。この継続が、構造転換期において大きなリターンへと転化したのである。
さらに重要なのは、「周期」の視点である。エネルギーやインフラは数年単位で変化するものではなく、数十年単位で構造転換が起こる。三菱重工が保有していた技術も、一朝一夕で形成されたものではない。長い時間をかけて蓄積された技術と人材が、社会の変化によって価値を発揮する局面を迎えたのである。
そして市場がその価値を認識したとき、株価は大きく見直される。エネルギー、環境、安全保障といった新たな社会基盤の中核に組み込まれたことで、三菱重工は「不可欠な存在」として再評価された。
結論は明確である。三菱重工の10倍上昇は、短期的な需給や景気によるものではない。長年維持してきた技術と人材が、エネルギー転換という歴史的な追い風と結び付いたことで、市場はその価値を再評価したのである。
複利とは単なる利回りではなく、時間をかけて蓄積された構造そのものだ。そして、その構造が社会の変化と接続されたとき、企業価値は大きく飛躍する。三菱重工の上昇は、その典型例と言えるだろう。
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