その主張は次のようなものである。脊椎動物は長い進化の過程で、摂取した神経毒を素早く確実に排出するシステムを発達させてきた。それは、吐き気や嘔吐、そして強制的な制止という反応だ。トライスマンが問いかけたのは、なぜ感覚の不一致が同じシステムを作動させるのかということだった。
植物アルカロイドや細菌毒素、腐敗した肉などに含まれる多くの神経毒は神経系を攪乱し、脳が空間的な参照枠(座標系)を統合する能力を低下させる。視覚信号と前庭信号、固有受容感覚信号が互いに一致しなくなったとき、それは祖先が暮らしていた環境においてはほぼ確実に中毒を示す兆候だった。嘔吐反射は誤作動ではない。有害なものが体内に入ったことを示す信頼できる信号に反応する、防御システムなのである。
この説によれば、乗り物酔いは進化上の「事故」である。感覚の不一致が神経毒による中毒を意味していた世界に合わせて調整されたシステムがもたらす副次的被害なのだ。裏付けとなる証拠は顕著である。前庭機能を完全に失った人は、トコン(吐根)のような催吐剤にほとんど反応しない。内耳の迷路は方向感覚の乱れを検知するセンサーであるだけでなく、体の毒物反応回路に不可欠な中継点でもあるのだ。
この理論のより現代的なバージョンである「神経ミスマッチ」仮説はさらに踏み込んだものだ。その仮説は、脳は過去の経験に基づいて感覚がどのように感じられるべきかについて継続的に予測を生成しており、めまいは感覚器官間の単純な不一致だけでなく、入力される信号と予測される信号の間の食い違いによって引き起こされる、と示唆している。この見方によれば、VR(仮想現実)酔いや車酔いは、脳の予測エラーシステムが、古代の論理に従って正しく「何かがおかしい」と結論づけた結果なのである。
一歩引いて全体を眺めてみると、驚くべきはこのシステムが時折私たちを裏切ることではなく、むしろ、これほどうまく機能していることである。魚が水流の中を進むために進化した構造が、這う動作や直立歩行、そして現代のスポーツやダンスで行われる素早い3次元的な頭部の動きに対応できるよう、段階的に適応してきた。しかも基本的なハードウェアはほとんど変わらずに、だ。かつて海のうねりに反応して傾いていたのと同じカルシウム結晶が、今まさにこの文章を読んでいるあなたの頭の角度を感知しているのである。


