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2015.11.05

窮地のVW社、復活への道 トヨタ、GMらの事例

Quka / Shutterstock

不正ソフトウエア搭載の発覚により、危機に直面しているフォルクスワーゲン(VW)。もはや同社の信頼回復は不可能との見方もある。

だが、窮地に追い込まれた自動車メーカーはVWだけではない。米国の自動車情報サイト「Edmunds.com」は、過去に安全性の問題で危機に陥ったトヨタや現代自動車、クライスラー、ゼネラル・モーターズ(GM)が、どうやって消費者の信頼を回復したかをまとめた。VWは訴訟と巨額の罰金、厳しいメディアの批判を乗り越え、米国市場で生き残るための方法をこの中から見出せるかもしれない。

事例1:トヨタ
運転者が意図しない加速によるトヨタ車の事故が最初に報じられたのは、2009年後半。それから1年、同社は数多くの批判的な報道に耐えることになった。同社はまた、安全性に関わる問題を隠ぺいしたとして、米司法省に12億ドル(約1450億円)の和解金を支払った。
2010年2月、米国市場でのトヨタのシェアは前年同期の13.5%から10.7%に縮小。顧客忠誠度は2009年2月の52.4%から44.8%に低下した。だが、2010年3月に始めた金利ゼロのローンが功を奏し、市場シェアは15.3%、顧客忠誠度は55%に回復した。
VWへの教訓:消費者に提示するインセンティブは、有意義なものでなくてはならない。購入ローンの金利をゼロにしたことは、購入を消費者に直接訴えるものと受け止められ、販売増に大きく貢献した。

事例2:現代自動車、起亜自動車
現代自動車、起亜自動車は2012年11月、米国市場で販売した2011年型から2013年型のモデルの約100万台について、燃費性能について過大表示を行っていたことを認めた。両社が米連邦政府に支払った和解金は、総額3億ドルに上った。
しかし、問題となったモデルの購入者への補償の一環としてデビットカードを発行したり、ガソリンスタンドに改訂後の燃費を表示したりするなど、迅速に対応したことから、両社の顧客忠誠度は翌12月にはわずかに改善。両社を合わせた市場シェアは、2013年4月には危機発生前の水準に回復した。
VWへの教訓:顧客忠誠度はまさに、企業が危機から抜け出し、事業を維持するための基盤。これが維持できていなければ、両社はより重大な危機に直面していたかもしれない。

事例3:クライスラー、GM
世界金融危機の影響もあり、GMは2009年6月に破産を申請した。その後、米政府はGMを救済するため、数百億ドルを投入した。
GMとクライスラー(現在はフィアット・クライスラー)の購入検討者や市場シェアは、破たんの前後も比較的安定していた。だが、政府が同年8月、「低燃費車への買い替え支援制度」を開始すると、クライスラーの顧客忠誠度は6月の49.8%から20%に、GMの顧客忠誠度は54%から35%に低下した。ガソリン価格の高騰が続いていた同年、両社にはより小型で燃費の良いモデルが必要だった。
両社はその後、いずれも相次ぎ小型モデルを発表。クライスラーはフィアットに買収されたことにより、製品にはサブコンパクト車も加わった。
VWへの教訓:市場のニーズを理解し、予測したうえで、製品やマーケティング戦略を調整することが不可欠だ。

文 =ジョアン・ミュール(Forbes) / 編集=上田裕資

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