地球に刻まれた太古の時を読み解く
太古の時代から気候が地球の自転にどのような影響を及ぼしてきたのかを調べるため、研究チームは底生有孔虫に着目した。この微小な海洋生物の化石の殻には、古代の海面変動について知るための手がかりが記録されている。研究者らは殻の化学組成を分析し、約360万年前の鮮新世後期以降の1日の長さの変動を復元した。
この研究で最も注目すべき発見は、過去の変動の大きさではなく、現在の変化の速さである。21世紀に入り、グリーンランドや南極の氷床、山岳氷河の融解が加速。海面の上昇が進むとともに、地球の両極から質量が移動した。その結果、地球は赤道付近がほんの少しばかり膨らんで扁平化し、自転速度がわずかに遅くなっている。
研究結果は、現代の気候変動が地球の自転に及ぼしている影響が過去360万年間で前例のないものであることを示唆している。
チューリッヒ工科大学のベネディクト・ソヤ教授(宇宙測地学)は、「1日の長さがこれほど急速に延びているという事実から示唆されるのは、現代の気候変動が、少なくとも360万年前の鮮新世後期以降には前例のないペースで進んでいるということだ」と指摘。「したがって、現在起こっている1日の長さの急速な増加は、主として人間活動の影響によるものだと考えられる」と述べている。
「史上最も短い1日」記録更新との兼ね合いは?
気候変動によって地球の自転速度が遅くなっているのであれば、なぜ地球の自転が加速したというニュースが最近報じられ、「観測史上最も短い1日」の記録が更新されているのだろうか。
たしかに気候変動は地球の自転を長期的に減速させているが、自転速度に影響する要因はそれだけではないと科学者らは説明する。地球の外殻を構成する液体金属の動き、大気循環の変化、海流、地球の形状の微細な変化など、さまざまな要因が1日の長さを数ミリ秒単位で変化させる可能性があり、自転を一時的に速めたり遅らせたりしているのだ。
地球上では2020年以降、近代観測史上最も短い1日の記録が何度か塗り替えられており、まだ研究で解明しきれていない機序が短期的に自転を加速させているとみられている。ただし、こうした変動ははるかに長期的な背景の中で生じている。それは月の引力が地球の自転を着実に減速させる一方、気候変動による氷床の融解がその減速ペースにますます拍車をかけているという状況だ。
ウィーン大学とチューリッヒ工科大学の研究結果では、温室効果ガスの排出量が現状のまま推移した場合、気候変動が1日の長さに及ぼす影響は21世紀末までに月の影響を上回ると予想されている。


