セルジ・セラートはスペインの弁護士で、ゲーム領域のインフルエンサーマーケティング企業MCR-AgencyのCEOである。
「これは買わないほうがいい」──報酬を支払っているクリエイターから、ブランドがこんな言葉を聞くとは思わないだろう。しかしそれは、いまのインフルエンサーマーケティングにおいて最も強力なシグナルの1つへと急速に変わりつつある。
少し前、私は、すべての制作物が洗練され、前向きで、ブリーフに完全に沿ったキャンペーンに携わった。インフルエンサーは書面上はすべてを正しくやっていたが、反応は期待外れだった。エンゲージメントは浅く、コンバージョンも伸び悩んだ。ちょうど同じ頃、キャンペーン外のあるクリエイターが、類似製品が価格に見合わない理由を解説する無償提供なしの動画を投稿した。その動画は、私たちのキャンペーン全体を合わせた以上のコメント、保存、議論を生んだ。さらに重要なのは、その同じクリエイターが後に代替案を勧めたところ、数日で売り切れたことだ。
ブランドがいま直面しているのは、この方向性である。影響力は、絶え間ない推奨によって築かれるものではなくなった。ディインフルエンシングの時代へようこそ。
ディインフルエンシングが信頼を集め、より強いコンバージョンを生む理由
重要なのは、オーディエンスが拒んでいるのはインフルエンサーマーケティングそのものではないということだ。拒まれているのは、予測可能性であり、長年にわたる過度に磨き上げられた推奨である。人々はすでに「売り込まれている」ことを見抜く訓練ができており、その結果、たとえ否定的であっても誠実さを求める声が高まっている。この潮流は2023年初頭に急速に勢いを増し、ハッシュタグ「#deinfluencing」はTikTokで10億回超の視聴を記録。クリエイターが過剰消費を公然と問題提起するなかで、継続的なエンゲージメントを集めている。
また、2019年のEdelmanの報告書では、消費者の63%が、ブランド自身の発信よりもインフルエンサーの発言のほうを信頼するとされている。つまりオーディエンスは、無差別に製品を推す人物よりも、選別眼と独立性を示すインフルエンサーのほうを信じる傾向が強いのである。
さらに、ディインフルエンシングは幅広いパフォーマンスの潮流とも整合する。実際、人は誠実で台本のないように感じられるコンテンツに引き寄せられる。つまり、時折「それはお金を払う価値がない」と言えるクリエイターのほうが、登場する製品をすべて勧めるクリエイターよりも信頼を積み重ねる。
逆説は単純だが強力である。クリエイターが購入を思いとどまらせると、次の推奨のインパクトが強まるのだ。
ブランドにとっての戦略的視点:コントロールから信頼性へ
長年、インフルエンサーマーケティングは「コントロール」のモデルで運用されてきた。ブランドが詳細なブリーフを提供し、メッセージを定義し、逸脱を最小限に抑えつつ製品の利点を強調するコンテンツを期待する。可視性が主要目的だった時代には、このアプローチは合理的だった。だが今日、それは影響力が実際に機能する仕組みと、ますますズレている。
ディインフルエンシングは、このモデルの中核を揺さぶる。批評やニュアンス、時には矛盾すら持ち込むからだ。ブランドにとってはリスクに映るかもしれない。しかし、いまより大きなリスクは、オーディエンスがもはや信頼しない過度に管理された物語を維持し続けることにある。
消費者は、台本どおりのコンテンツを見抜くことに長けてきた。Nielsenの2021年「Trust in Advertising」調査では、消費者の88%が、知人からの推奨を他のいかなる広告チャネルよりも信頼すると示された。個人的な推奨は購買意思決定の最も強力なドライバーの1つである。しかし、その信頼は、コンテンツが過度に作り込まれていたり、一面的だったりすると損なわれる。
今や信頼性は一貫性を上回る。「この製品は誰にでも合うわけではない」と言えるクリエイターは、すべての製品を万人向けとして提示するクリエイターよりも、長期的には大きな価値をもたらすことが多い。
これは、否定的な内容を目的化すべきだという意味ではない。ブランドは、限界やトレードオフを含むものであっても誠実でいようとするインフルエンサーと組むべきだ、ということである。そうすることでブランドは、より現実的で信頼できる物語のなかに自社製品を位置づけられる。
コントロールを失わずにディインフルエンシングを活用する方法
ディインフルエンシングの時代への適応は、戦略の放棄を求めるものではない。ただし、成功の定義を再設計する必要はある。コントロールを失わずにディインフルエンシングを活用する方法をいくつか挙げる。
1. 硬直したブリーフから、柔軟なクリエイティブ指針へ移行する
言い回しを逐語的に指定するのではなく、ブランドは製品に関する重要な事実を提示し、それをクリエイター自身の言葉で解釈させるべきである。その結果、ブランドから押し付けられたものではなく、クリエイターのオーディエンスにとって自然なコンテンツになる。
2. 思慮深い評価を示すクリエイターを優先する
長所と短所の双方を一貫して共有するインフルエンサーは、肯定的な推奨しか投稿しない人物よりも、強い信頼を築く。時間とともに、オーディエンスはその判断を信じるようになり、製品を勧めた際のコンバージョン率は高まる。
3. 可視性を超えて、パフォーマンス指標を再定義する
「いいね」やインプレッションは、真の影響力を理解するうえで得られる示唆が限られる。保存数、シェア数、コメントの深さ、コンバージョン行動といった指標は、コンテンツがどの程度響いているかをより明確に映し出す。InstagramやTikTokといったプラットフォームも、こうした深いエンゲージメントのシグナルを優先する傾向を強めており、表層的な到達よりも意味のある相互作用が重要であることを後押ししている。
4. 誠実さを活かして、商業的成果を改善する
消費者がバランスの取れたコンテンツに基づき十分な情報を得たうえで意思決定できれば、ブランドは返品率や購入後の不満を減らしやすい。より広範なEC研究でも、期待と現実を一致させることが顧客満足と長期的な継続に資することが示され続けている。
5. ディインフルエンシングを脅威ではなく、フィルタリングの仕組みとして扱う
このアプローチは衝動買いを減らす可能性がある一方で、購入に至る人が製品と本当に適合している確率を高める。結果としてブランド好意度が強まり、より持続可能な成長につながる。
まとめ
インフルエンサーマーケティングは有効性を失っているのではない。より選別的に、より誠実に、そして最終的にはより持続可能な形へと進化している。
ディインフルエンシングは、説得から許可への転換を示す。オーディエンスは、もはや「納得させられる」ことを望まない。何を買うべきかと同じくらい、何を買うべきではないかを決める助けになるクリエイターだけを評価する。
ブランドにとっての要点は明快である。メッセージを過剰にコントロールしようとするのをやめよ。自社製品に自信を持ち、それをめぐる誠実な対話を許容できるだけの胆力を持つことだ。
肯定的な推奨で飽和した市場では、「抑制」が差別化要因となった。インフルエンサーが「買わないで」と言うとき、その言葉はより説得力を増し、そして著しく信頼に足るものになる。



