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経営・戦略

2026.07.02 15:15

『エフェクチュエーション』の伝道師吉田教授が語る「中小企業こそ本理論を使え」

第5の「飛行機のパイロット」とは、未来を予測するのではなく、自ら操縦桿を握ることだ。縮む業界という事実は変えられない。だが、変えられないものを見つめ続けても勝ち筋は出てこない。同じ環境でも、操縦桿を握り続けた人だけが、別の景色にたどり着いた。

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私が現場で長く感じてきたのも、このパイロットの原則の重さだ。経営者なら誰もが操縦桿を握っているはずだ、と私はかつて思い込んでいた。

だが現場は違う。コロナ禍を、多くの人が仕方のないことだと受けとめた。縮む業界だから厳しい、と語る。説明としては正しい。だが、その時点で操縦を手放してもいる。

吉田さんは、サラスバシーの言葉を引いたアントレプレナーシップとは感情的オーナーシップである、と。法的な所有や権限とは別の話だ。これは自分がやることだと引き受ける気持ちこそ、核にあるのだという。稲垣さんは4代目、池原さんは3代目だった。継いだ事業に、機能としての所有はある。だが感情としての所有は、自分でつかみ直すしかない。

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「所有」はどう育つか

その所有はどう育つのか。自分が制御できる範囲に集中し、手応えを積む。その繰り返しでしか育たない、と吉田さんは言う。教え子のひとりは、毎朝、自分が持っているもの、知っている人、やりたいことを書き出すことから始めた。今日できる1歩を考え、やった場合とやらなかった場合の損失を見比べ、許せる範囲なら動く。それを続けるうちに、つながりが広がり、できることが増えていった。小さな成功体験が自信を育て、その自信が操縦する感覚へとつながっていく。

そう考えると、これは経営者だけの方法ではない。普通に働く会社員が、自分の強みは何か、誰を知っているかを起点に、ビジネスとは限らない何かを始める。地域の役や保護者の集まりに踏み出し、人とつながり、できることが少しずつ増えていく。手元にあるものと、許せる範囲の一歩から始めればいい。エフェクチュエーションは、1人ひとりの生き方の理論でもあった。

最後に、吉田さんと意見が一致したことがある。理解しているはずの専門家でも、コーゼーションからエフェクチュエーションへの切り替えはむずかしい。知識として知っている人ほど、つい予測的なモードのまま動いてしまう。

私自身、事業者の話を論理的に整理し分析した末に、勝ち筋が見えないと判断してエフェクチュエーションへ移る。この切り替えのコツを言葉にできれば、もっと多くの人が二つを使い分けられるようになる。4社の経営者が教えてくれた問いの先に、取り組むべき宿題が、もう1つ増えた。

吉田満梨(よしだ・まり)◎マーケティング研究者。神戸大学大学院経営学研究科修了、東京都立大学などを経て2021年より現職。主著に『エフェクチュエーション優れた起業家が実践する「5つの原則」』(ダイヤモンド社)など。

文=吉田満梨 編集=石井節子

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