Forbes JAPAN 2026年8月号の第3特集は、日本でも新たな動きが起きているフィランソロピーに注目した「『インパクトフィランソロピー』時代」特集。今、世界、日本で起きているフィランソロピー新潮流では何が起きているのか。これまでも特集をしてきた、日本で起きている「起業家×フィランソロピー」の新たな動きにも探る特集だ。
18億円規模の株式を正社員・役員などへ無償譲渡したMIXI創業者の笠原健治。フィランソロピーでも大事にしてきた価値観は「信頼」だ。
「上の子はもう中学生。子どもたちが成長して活動範囲が広がるにつれて、今まで見えていなかったことにも目が向くようになりました。例えば部活は先生だけでなく地域のプロコーチに支えられてるんだなとか、子どものスマホの向き合い方は難しいなとか。小中学生への解像度が上がったことで、私のなかで青少年の課題に取り組む団体への共感も増しています」
MIXI取締役ファウンダー 上級執行役員の笠原健治は、「みてね基金」の支援先の広がりについてこう語った。
笠原はプライベートの関心が仕事や社会貢献活動と直結するタイプの起業家だ。新規事業として子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」を立ち上げたのは、第一子が生まれて2年後の2015年。子どもに愛情を伝えたい、家族の絆を深めたいという自らの思いが反映されたサービスだった。
みてねは17年に海外展開するなど、事業として順調に成長していく。ただ、自ら子育てをするなかで、子どもにまつわる課題が世の中には数多くあることを知り、営利事業だけではそれらをカバーしきれないもどかしさを感じ始めた。そこで2020年4月に、子どもや家族の課題に取り組む非営利団体を支援する「みてね基金」をスタート。こうした経緯で基金を立ち上げただけに、自身の子の成長とともに課題意識が広がっていくのは自然なことだった。
みてね基金が支援するのは「難病・障がい」「教育」「貧困」「出産・子育て」「虐待」の5領域に取り組むNPO。助成先団体は事務局のメンバーと話し合って選考するが、笠原が特にこだわっている点がある。
「新しい事業を生み出して育てるときに逆風はつきもの。私たちも営利事業を長年展開するなかで逆風を何度も経験してきました。身をもってその苦労を知っているからこそ、意義はあるけど無謀だったり、助成がつきにくい挑戦を見ると応援したくなる」
実際、みてね基金は一般的な助成制度からこぼれおちてしまうような活動を支援する助成プログラムをふたつ用意している。
まずひとつは「イノベーション助成」。その名前の通り、革新的な解決策のアイデアと実行力をもつ団体に、その取り組みを進めるための資金を支援する。もうひとつは「ステップアップ助成」。こちらは地道に活動を続ける団体が対象。地道な活動は助成対象になりやすいが、一般的な助成制度は資金の使途をその活動に限定していて、活動を継続・発展させるための人材育成やIT投資などには使えないことが多い。それに対して、みてね基金のステップアップ助成は事業基盤の整備に対して資金を提供する。
どちらの助成プログラムも、支援は資金提供にとどまらない。「MIXIで培ってきた事業や組織のマネジメントに関する経験やノウハウを生かした非資金的支援も行っています。いわゆる伴走型支援です」。



