【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

起業家

2026.06.27 12:00

MIXI笠原健治が「みてね基金」に17億円を投じて実践する信頼の支援

笠原健治|MIXI取締役ファウンダー上級執行役員 / みてね基金 代表理事

信頼の「正のサイクル」

みてね基金は26年4月で活動6周年を迎えた。これまで4期で支援した先は約110団体にのぼり、笠原が拠出した資金も累計で17億円に達した(26年5月時点)。この6年の活動で進化した部分を問うと、笠原は「伴走がうまくなった」と答えた。

advertisement

「複数の課題がある場合、営利の世界では優先順位をつけて取り組むことが普通です。しかし非営利のみなさんは経済合理性から自由で、『課題が複数あればすべてやる』と考える。その行動原理を理解してからは、『これは優先順位が低いからやめましょう』と安易に言わなくなった」

一方、営利事業をやってきたからこそ、発展してきた部分もある。一般的に助成制度は単年度のものが多いが、営利事業は中長期的視点で事業に取り組むことが普通。その経験から、イノベーション助成は3年、ステップアップ助成は2年と、第2期から助成期間を複数年に設定した。みてね基金は柔軟性の高さも特徴のひとつだが、それも営利事業での経験が生きている。「事業は最初の仮説が外れることも多く、模索して計画を変更していくことが普通」と、助成金の使途変更にも柔軟に応じている。

支援先の主体性を尊重して柔軟な変更を認める背景には、支援先との信頼関係がある。「信頼」は笠原が大事にしてきた価値観でもある。以前から事務局内の議論でも信頼というキーワードがよく飛び交っていたが、25年4月の一般財団法人化に合わせて「Trust-Based Philanthropy (信頼に基づく慈善運動。以下TBP)」を標榜。あらためて信頼を重視する姿勢を示した。

advertisement

TBPは20年にアメリカで生まれたムーブメントで、助成機関とNPOの間でパートナーとしての信頼関係を築くことで、NPOが本来取り組むべき社会課題により注力できるよう支援することを指す。具体的には「長期的で柔軟性のある資金提供」など6つの実践が推奨されている。複数年で柔軟な計画変更に対応してきたみてね基金は、もとよりTBPの実践者だったわけだ。

一方、TBPを掲げたことで加速したところもある。「報告書類の簡素化・合理化」「助成先からのフィードバック重視」だ。「私たちがTBPにのっとった支援ができているかどうか、支援先からフィードバックをいただいています。その結果を受けて、これまで四半期ごとだったレポートの回数や、申請書の項目を削ったケースもあります。書類ではなく口頭で伝えてもらう場面が増えたことで、かえってコミュニケーションの総量が増えました。文字にはできなかった本音を聞けたりもして、お互いにより腹を割って話せるようになった気がします」

信頼に基づいて事務負担を減らした結果、さらに信頼関係が深まるという「正のサイクル」が回り始めているのだ。

26年5月からは新助成プログラム「継続助成」を開始した。従来のふたつのプログラムは公募型で、一度採択された団体は原則的に再応募できない。しかし、プログラム修了後も支援を必要とする団体は多い。そこで採択実績のある団体を対象にした継続助成を創設し、指名型で助成をする。申請書類作成の負担を減らし、対話を通じて次の支援先を決めるのは、まさにTBPの発想だろう。

TBPの6つの実践のひとつに「Do the Homework」がある。支援先が取り組む課題や組織の状況について、資金提供者も責任をもって学ぶことを指すが、笠原はそれと別の“宿題”も意識している。

「みてね基金で独自に非営利事業を手がけることも視野に入れています。現在は、いろいろ試行錯誤している段階。どのような事業になるかわかりませんが、いずれ何かしらのかたちでプレイヤー側として子どもと家族の問題にかかわりたいですね」


笠原健治◎MIXI取締役ファウンダー 上級執行役員、一般財団法人みてね基金代表理事。大学時代に求人情報サイト「Find Job!」を立ち上げ、99年に代表取締役に就任。2006年にミクシィを株式上場。21年6月に取締役ファウンダー就任、22年4月から現職。20年4月から「みてね基金」開始。

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事